西日本福音ルーテル教会(神戸市)が昨年、新型コロナウイルスにより特例が認められている雇用調整助成金(雇調金)で約930万円を受給し、その後労働局から指摘を受け、全額返金していたことが分かった。緊急事態宣言により礼拝を休止していた期間を、勤務実態がありながらも休業期間とみなしていたという。「週刊文春」が不正受給の疑いがあるとして4月1日号で伝え、文春オンラインにも24日、概要を伝える記事が掲載された。
週刊文春によると、西日本福音ルーテル教会は緊急事態宣言が発令されていた昨年5月、礼拝や集会を休止している期間は、勤務実態があっても休業期間にみなされるとし、教団所属の牧師らに出勤簿に印鑑を押さないよう指示していたという。その上で昨年5月分について雇調金を申請し、同年9月に933万円を受給した。しかしその後、監督機関である兵庫労働局から「本当に休業していたのか」と疑義を呈され、今年2月に全額返金したという。
申請は当時の教団事務局長らが各教会の牧師らに賛否を問い、賛成多数となったため行った。しかし、一部の牧師からは「不正なのではないか」と疑問視する声もあったという。礼拝が再開した後の昨年6月分の申請も検討されたが、直前に取り下げが決まり申請は行われなかったという。
西日本福音ルーテル教会の萩澤耕司・常議員会議長は週刊文春の取材に、牧師の働きは礼拝が中心だとし、礼拝を全面的に休止していた昨年5月は休業に当たると考えたと説明。当時は教団解散さえも頭をよぎる危機感があったと語った。一方、兵庫労働局は週刊文春の取材に、「現状不正受給と認定している事案ではない」として詳細な回答は控えたが、不正を疑わせる客観的証拠などが提示されれば、再調査する可能性もあるとした。
西日本福音ルーテル教会は25日、萩澤議長による文書「雇用調整助成金の返納の件について」を公式サイトに掲載した。それによると、当時の議長が社会保険労務士法人「経営管理センター」の指導を受けながら申請を行ったという。また当時は、休業期間における牧師の活動は、自ら進んで行った無償奉仕であり業務には当たらないと認識していたという。しかし法的には、牧師が行う教会活動はすべて業務に該当し、教会の閉鎖と牧師の休業が一致しないことが分かったため、自主返納したとしている。
すでに兵庫労働局と話し合いの上、適切に解決している問題だとしているが、今後速やかに第三者を含む検証委員会を立ち上げ、申請から返納に至る経緯に問題がなかったか検証を行うという。その上で「今回の件を重く受け止め、今後の取り組みに生かし、このようなことが再び起こらないよう誠心誠意努めてまいります」としている。
※ 教団公式サイトに掲載されている文書は26日現在、「雇用調整助成金返納についての説明とお詫び」に変更されています。