友人や家族に福音を伝えたい。でも、時代や文化の違いから、なかなか聖書の素晴らしさを伝えられない――。そんなクリスチャンの一助になればと、シンガポール在住の戸塚司郎さん(ペンネーム)が昨年12月、現代社会とのつながりを意識しながら聖書66巻を一つずつ解説した電子書籍『聖書がひも解く世界の歴史』を出版した。想定読者は「聖書をおとぎ話として一蹴するような理屈っぽい日本人」。戸塚さんは、「コロナ禍で生きる希望を失いかけている日本の若者や困難にある方にぜひ読んでもらえれば」と話す。
現在、シンガポール日本語キリスト教会に通う戸塚さんは、1964年生まれの56歳。大学卒業後に銀行に就職し、営業やマーケティングで海外勤務を重ねた。現在は国際会計事務所に勤務している。香港とインドネシアでの駐在を経て、シンガポールでの生活は12年になる。50歳を過ぎてから信仰を持ったという。
執筆のきっかけは、妻への伝道だった。筆を進めるうちに、日本に暮らす家族にも伝えたいと思いは広がっていった。そんな矢先の昨年10月、87歳になる母親が老衰で亡くなった。「ノンクリスチャンの母親に献本する希望は2カ月の時間差でかないませんでした。愛する兄弟姉妹には、有限な時間の中で一分一秒を大切に伝道してほしいという思いで書き上げました」
教会での充実した聖書の学びを軸に、人類の歴史や科学と聖書とのつながりについて独自に研究を重ねた。日本の義務教育では十分に扱われていない聖書について、福音書記者であるルカの手法を参考に、史実の積み上げに基づいて理性に語り掛けることを意識した。「ユダヤ民族の特殊性や直近の国際情勢を交えながら終末期に向かっている状況を解き明かすことで、現代人にも聖書は大きく関わりのある書物であることを実感してもらえるような内容にしようと心掛けました」
「もともとは口下手な夫の私からノンクリスチャンの妻に送る私信として書き始めたものでした。そこから、コロナ禍で生きる希望を失っている日本人が増えている中で『どのように生きるか』という聖書のはっきりとしたメッセージを伝え、イエス様の命の水をバケツリレーで届けたいという思いへと広がり、書籍にしたものです。少しでも福音伝道に役立てていただければと願っています」
電子書籍を専門に扱う「理想書店」では、月間の総合ランキングで7位(17日現在)とトップ10入りしている。第1章「聖書を読む際の基礎知識」までは無料で試し読みができる。『聖書がひも解く世界の歴史』は、理想書店のほかアマゾンやブックライブなどの電子書籍販売サイトで購入可能。