昨年11月の米大統領選の結果を決める最終的な手続きが行われていた米連邦議会の議事堂が現地時間6日午後、ドナルド・トランプ大統領の支持者らによって占拠され、審議が一時中断する事態となった。議事堂内では、この混乱で少なくともトランプ氏支持者の女性ら4人が銃で撃たれ死亡した。この事態を受け、米国のキリスト教指導者は相次いで暴力的な議会占拠を批判するとともに、祈りを呼び掛けた。
昨年11月3日に行われた大統領選では、州ごとに割り当てられた計538人の選挙人のうち、民主党のジョー・バイデン氏が306人、共和党のトランプ氏が232人を獲得。同12月14日に行われた選挙人による投票も大統領選の結果通りとなり、連邦議会ではこの日、各州の選挙人投票を最終認定し、次期大統領を選出するための最後の手続きが行われていた。
この手続きは形式的なもので、通常は短時間で終わるが、この日は上下両院で多数の共和党議員が認定に異議を申し立てる意向を示していた。実際に審議が始まってすぐ、バイデン氏が勝利した西部アリゾナ州の結果に対し共和党議員が異議を表明。両院で審議が行われている中、トランプ氏の支持者らが議会に乱入し、占拠する事態となった。
トランプ氏はこれに先立ち、ホワイトハウス近郊で大規模な集会を開催。大統領選の敗北を認めないと演説するとともに、支持者らに議事堂に向かうよう呼び掛ける内容を語っていたという。
しかしその後、支持者らが議事堂内に乱入する事態になると、ツイッター(英語)に「議会警察と法執行当局を支持するようお願いする。彼らは本当にわれわれの国の側にいる。平和的なままでいて」と投稿。さらにその後のツイート(英語)では、「米国の議会にいるすべての人に、平和的なままでいるようお願いする。暴力はダメだ。忘れないで。われわれこそ法と秩序の政党だ。法律、われわれの素晴らしい警察官たちを尊重して」と呼び掛けた。
一方、バイデン氏は、AP通信(英語)によると、地元の東部デラウェア州で演説し、「われわれの民主主義は前例のない攻撃を受けている」と述べ、議事堂の占拠は「法の支配への攻撃だ」と批判した。
この事態について、米国内のキリスト教指導者も相次いでコメントを発表した。
福音派の中心的な大衆伝道者として知られるフランクリン・グラハム氏はツイッター(英語)で、「今日、私たちの国の首都で起こったことに深い悲しみを感じています」とコメント。「私たちの国は困難な状況にあります。私たちは、神の癒やしと助けを必要としています。平和のために、また国が守られるよう祈りましょう。ひざまずいて一緒に祈りましょう」と呼び掛けた。
米南部バプテスト連盟倫理宗教自由委員会委員長のラッセル・ムーア氏はツイッター(英語)で、「私たちの議会と憲法に対するこの暴徒の攻撃は、不道徳で、不当で、危険で、許し難いものです。私たちの国に起こったことは悲劇であり、回避できたはずのものです」と語った。その上で別のツイート(英語)では、トランプ氏に対し「あなたには、これらの暴徒に、この危険で憲法違反の無政府状態を止めるよう求める道徳的責任があります。どうかそうしてください」と求めた。
トランプ氏の霊的助言者として知られている女性テレビ伝道者のポーラ・ホワイト氏は、ツイッター(英語)に次のように投稿した。
「私は常に、あらゆる形態の暴力、無法状態、無政府状態を非難してきましたし、今後もそうします。私は、すべての人々が憲法修正第1条と言論の自由を保護することを確信しています。私たちは暴力的になることなく、抗議を行うことができるはずです。皆さん、どうぞ祈り続けてください」
西部カリフォルニア州のメガチャーチ「ハーベスト・クリスチャン・フェローシップ」の牧師で、大衆伝道者のグレッグ・ローリー氏も、ツイッター(英語)で次のように述べ、祈りを呼び掛けた。
「私たちの議会から届く写真に驚いています。活気に満ちた抗議は米国人らしいものです。暴力と無政府状態はそうではありません。私はそれを非難します。民主党支持者と共和党支持者の皆さん、一緒に米国のために祈ってくれませんか。私たちの街の平和のために、私たちの指導者たちに守りと知恵が与えられるよう祈ってください」
米連邦議会は6日午後8時(日本時間7日午前10時)過ぎには再開された。
一方、首都ワシントンのミュリエル・バウザー市長はこの事態を受け、6日午後6時(同7日午前8時)から12時間、外出を禁止する命令を発令した。