主は正しい人を飢えさせず(箴言10:3)
ある男が自分の妻の誕生日に10カラットもあるダイヤモンドの指輪をプレゼントしたと自慢しています。そして友人に言いました。「キミの奥さんももうすぐ誕生日だね。奥さん確か、格好いいスポーツカーを欲しがっていたよね」
友人は困ったように言います。「そうなんだよ、ダイヤの偽物はあってもスポーツカーの偽物ってないだろー!」
世の中には本物らしく見える偽物が氾濫しています。偽札、偽金、偽ブランド品。そして人々は誠実であることより、いかに誠実そうに見えるかに心を使い、正直であることより、いかに正直そうに見えるかに心を配るのです。「正直者がばかを見る」とでも思っているのでしょうか。
しかし、聖書は言います。
すべて真実なこと、すべて尊ぶべきこと、すべて正しいこと、すべて清いこと、すべて愛すべきこと、・・・そのようなことに心を留めなさい。(ピリピ4:8)
2013年2月、米国のカンザスシティで起きた物語です。黒人のホームレス、ビリー・レイさん(当時56歳)はメインストリートで物乞いをしていました。彼は16年前に仕事を失い、収入がなくなり、それが原因で離婚し、家を出てそれ以来ホームレス生活をしていたのです。
ある日、広告代理店に勤める白人の女性サラさんが、路上にいるビリーさんに財布の中の小銭を寄付してくれました。しかし翌日、サラさんは夫からもらった婚約指輪がないことに気が付きました。サラさんは、指に発疹ができていたので指輪を外して小銭入れにしまっていたことをすっかり忘れ、小銭と一緒につかんで指輪も寄付してしまったのです。
サラさんはすぐにメインストリートに行ってみましたが、昨日の黒人のホームレスの姿はありませんでした。サラさんはそれでも諦めきれず、その翌日再びその場所に行くと、黒人のホームレスがそこにいたのです。
「一昨日、小銭と一緒に指輪も寄付したみたいなのですが・・・」とサラさんが言うと、ビリーさんは「指輪!それなら取ってあるからついてきて」と言って、彼が仲間と寝泊まりしている橋の下まで案内し、指輪を返したのです。
実はビリーさんは、一度は指輪を売ろうと思って宝石商に持っていきました。査定された金額は4千ドル(約40万円)でした。ビリーさんはこれだけのお金があれば、ホームレス生活から抜け出せると思いました。
しかしその時、心の中に声がしたのです。「その指輪は売ってはいけない。それはお前のものではない」。その声に促されるようにして、ビリーさんは指輪を持ち帰って保管していたのです。
ビリーさんは、生まれて間もなく父親を失い、母親の父、つまり祖父に育てられました。祖父は牧師でしたので、小さい時から聖書の教えに従うことや神の声に従うことの大切さを教えられて育ちました。その結果、ビリーさんは指輪を売らずに、物乞いをしながら指輪の持ち主が戻ってくるのを待っていたのです。
ビリーさんは指輪をさっさとお金に換えて「指輪なんて知らないよ」とうそをつくこともできたはずです。しかし彼は、心の内の神の声に従ったのです。
サラさんからビリーさんのことを聞いたサラさんの夫は、ビリーさんの正直さに感動し、インターネット上で「正直者ビリー」への寄付を募りました。目標は千ドル(約10万円)でしたが、この話が全米ネットのテレビで放送され、約20万ドルが集まったのです。
現在ビリーさんは、この寄付金を頭金として家を購入し、家などを塗装する会社を立ち上げています。また、テレビを見た兄弟や親族と16年ぶりの再会も果たしました。
ビリーさんはテレビのインタビューに次のように答えています。「私をホームレスの生活から救ってくださった多くの方々の善意に心から感謝しています。神様は本当に良い方で、私を愛してくださっています。この物語の主人公は、私ではなく神様です。この物語は、人が神様の教えや心に響く神様の声に従うとき、どんなに素晴らしいことが起きるかを私の人生を通して神様が世界中の人々に語っておられるのです」
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