8月13日、世界に歓喜が走るような明るいニュースが流れた。米国の仲介のもとイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交樹立の取り決めがなされたのだ。
1948年のイスラエル建国以来、湾岸アラブ諸国で国交樹立を決めたのはUAEが初めてとなる。この合意は、ユダヤ民族(イサク)とアラブ民族(イシュマエル)の共通の父祖の名にちなんで「アブラハム合意」と名付けられた。
この快挙には、トランプ大統領の政敵も賛辞を贈らないわけにはいかないだろう。この合意に至った背後にある最大要因は“イラン”という共通の脅威だ。2017年にはイスラエル軍参謀総長が対イランを見据えてサウジへの情報提供を呼び掛け、18年には同軍参謀長が秘密裏に2回もUAEを訪問している。それに加えてトランプ大統領の娘婿で米ユダヤ人のクシュナー上級顧問の3年に及ぶ外交努力の成果を認めつつも、今回の合意には米福音派の影響があったことをトランプ大統領は隠さなかった。
米国人の30〜35%が福音派信者といわれるが、ピューリサーチセンターの最新の調査によれば、その72%がトランプ大統領のイスラエル・パレスチナ間の中東政策には偏りがないと見ている。それら福音派の人々の大半は、イスラエルの建国は終末時代の聖書預言の成就と捉えているのだ。
今回の同意には、湾岸のアラブ国のバーレーンとオマーンが早々に支持を表明したが、なんとUAEとの合意から1カ月たたない9月11日に、バーレーンが続いてイスラエルとの国交樹立を決めたとの発表が、トランプ大統領の Twitter で明らかになった。15日にはネタニヤフ・イスラエル首相、UAE外相、バーレーン外相らをホワイトハウスに招き、米国の仲介のもと国交樹立の署名式がなされた。11月に大統領選を控えたトランプ氏には大きな追い風だ。この成果によって、トランプ大統領は2021年のノーベル平和賞候補に正式にノミネートされた。
アラブ諸国の盟主サウジアラビアは沈黙を守っているが、これは「サウジはこの合意を非難しない」とのメッセージとして捉えることが可能で、必ずしも否定的な沈黙と考える必要はないのだろう。
18年5月に米国大使館がイスラエルのテルアビブからエルサレムへと移転された。その時にマスコミはこぞって「中東和平は絶望的になった」と無責任に書き立てた。しかし、我らの主は聖書において約束された、「あなた(アブラハム)を祝福する者をわたしは祝福し、あなた(アブラハム)をのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される」(創12:3)と。
起きている事柄の深層にあるのは紛れもなく目に見えない霊的な原理原則だ。我々も物事の表層だけを見るのではなく、深みにある真理に目を向けるべきではないか。
いずれにしても、中東でイスラエルの存在を認めつつ和平が進行しており、このために祈ってきた世界中の聖書的キリスト者は大いに喜んでいる。イサクとイシュマエル、アブラハムの末たる彼らの救霊と和解がさらに進むよう祈っていただきたい。
■ アラブ首長国連邦(UAE)の宗教人口
イスラム 67・7%
ヒンズー 15・5%
カトリック 4・8%
プロテスタント 0・7%
聖公会 2・2%
仏教 3・7%
バハイ 0・6%
無宗教 1・6%