聖書協会世界連盟(UBS)の年次報告書によると、2019年に世界で頒布された聖書(旧新約合本)は4000万冊に上り、聖書頒布の歴史において記録的な数となった。これに加え、新約聖書は1500万冊が頒布され、聖句入り小冊子や絵はがきなどの選集を含めると頒布数は世界で計3億1500万冊となった。欧州の福音派メディア「エバンジェリカル・フォーカス」(英語)などが伝えた。
昨年の聖書(旧新約合本)頒布数の4000万冊のうち、25%はアプリなどでダウンロード(DL)されたデジタル版の聖書だった。デジタル版が占める割合は、18年は17%でインターネットやスマートフォンの普及により19年はさらに伸びた形。世界的に普及している聖書アプリ「ユーバージョン」で、聖書のDL数が最も多かったのはブラジルで180万DL。次は米国(100万)で、メキシコ(70万)、コロンビア(60万)、アルゼンチン(40万)と、南北米大陸の国々が上位を占めた。
UBSがデジタル戦略の柱としている「デジタル聖書図書館」(DBL)の規模もこの5年で倍増した。DBLには現在、1622言語約2500の聖書訳がデジタルデータとして保管されており、各種ウェブサイトやアプリで利用できるよう提供されている。
デジタル版の聖書は、キリスト教に対する迫害が厳しい国では、より安全に神の言葉にアクセスするための貴重な方法となっている。昨年はイランやイエメン、パキスタンなどのイスラム圏の国々で、多くのクリスチャンがデジタル版の聖書を手に入れた。
UBSのマイケル・ペロー事務局長は、「2019年の私たちの努力により、何百万人もの人々が御言葉を手にしながら、2020年の諸課題に立ち向かうことができるようになったということを知り、心を強められています」とコメント。「このような困難な日々の中で、神の言葉が慰めと希望をもたらしてくれますように。そして、記録的な聖書の頒布数を祝うべきですが、もっと重要なのは、人々が御言葉とその人生を変えるメッセージに触れることで、神の言葉が個人、家族、地域社会を変えていくのを目の当たりにすることです」と語った。
昨年、世界で最も聖書が頒布されたのはブラジル。頒布数は770万冊を超え、世界で頒布された聖書の5冊に1冊がブラジルで頒布されたことになる。ブラジル聖書協会は、サンパウロ州に独自の聖書印刷工場を所有しており、19年は1日当たり2万3千冊という驚異的な数の聖書を製作した。聖書印刷工場の総支配人であるルイス・フォルリム氏は次のように話した。
「印刷された聖書一冊一冊が、少なくとも一人の人の手に届くのです。聖書の教えや価値観に簡単にアクセスできるようになったことで、多くの人々が人生の困難な状況や問題に立ち向かうための導きや慰めを見つけるだけでなく、希望と自尊心を再び持つことができるようになったと確信しています」
報告書によると、15年以降の5年間で、聖書(旧新約合本)は1億8400万冊、新約聖書は6800万冊、聖句入り選集は16億冊頒布された。これは合計で18億冊を超え、世界人口の約4分の1に相当する。
この他、昨年頒布された聖書や聖書関連の小冊子のうち、370万冊は子ども向けのものだった。このうち127万冊は、人口の40%が15歳以下というアフリカの子どもたちに送られた。また、聴覚障がい者のための聖書翻訳も進み、昨年は29の手話言語で聖書の一部が訳された。さらに、20カ国以上で最大16万5千人を対象にした識字クラスが行われ、新しい読者のために450万冊以上の聖書の小冊子が頒布された。
聖書協会世界連盟(United Bible Societies=UBS):1946年、戦後の混乱の中にある欧州やアジアの人々にいち早く聖書を届けようと、13の聖書協会が協力したことで始まった。世界的に貧富や教勢の差がある中で、聖書普及や翻訳、製作などを支援し合う働きをしている。日本聖書協会を含め約150の聖書協会が加盟しており、活動地域は世界200カ国・地域に上る。加盟聖書協会によって翻訳・頒布されている聖書は、世界の聖書の約7割を占める。