全国のキリスト教書店員が一番読んでほしい本を投票で選ぶ「キリスト教書店大賞2020」が11日、公式フェイスブックで発表され、ヘンリ・ナウエンの『今日のパン、明日の糧―暮らしにいのちを吹きこむ366のことば』(嶋本操監修、河田正雄訳、日本キリスト教団出版局)に決まった。
受賞作は、20世紀を代表する教会の霊的指導者といわれるナウエンが、最晩年につづった集大成の一冊。既存の著作から1年分の言葉を選んで一冊にまとめることを提案されたナウエンが、それを退け、1日1ページずつ366のメッセージを書き下ろして本書を完成させ、その後間もなく帰天した。数多い著作の中でも最も包括的な内容であり、格好のナウエン入門書ともいえる。
受賞を受けて解説者の酒井陽介神父(イエズス会司祭)は、「ここに紡がれているメッセージを一言で表すと、『見よ。この人を』だと思います。もちろん、この人とは、イエス・キリスト。この日々の小さな黙想は、ナウエンのまなざしの先にあったイエスを共に見つめるように招いています。ナウエン渾身の日々の語り、いただきます!」とコメント。アバコ・ブックセンターの山本真里江さんは、「揺れ動くことが否定的に捉えられがちな中で、揺れ動き、迷うことへの肯定があることに救いを感じられます」と薦めている。
同賞は、低迷するキリスト教出版業界を少しでも活性化させようと、2011年に始まった。主催のキリスト教出版販売協会に加盟する全国のキリスト教書店の店員が1次投票で10作品に絞り、2次選考で大賞を決めた。2位には、脳卒中により利き手を失った版画家、勝間としをさんのデジタル版画による野猫のイラストに、青山学院大学の人気講師である塩谷直也教授が聖書の言葉とエッセイを添えた『にゃんこバイブル』(保育社)、3位にはロックバンド「牧師ROCKS」でベース、ボーカルを担当する関野和寛牧師(日本福音ルーテル東京教会)の『神の祝福をあなたに。』(日本キリスト教団出版局)がランクインした。
同賞10周年となる今年は、歴代ベスト3作品の計27点から読者投票で選ぶ「歴代ベスト3グランプリ」も行われ、18年に大賞を受賞した片柳弘史神父の『こころの深呼吸』(教文館)が大賞に決まった。2位には『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎、第3回大賞)、3位には『タイムっち』(キリスト新聞社、第4回3位)が続いた。