米プロテスタント最大教派の南部バプテスト連盟(SBC)で、初の黒人理事長が誕生する可能性が出てきた。SBCは1845年、奴隷制度に関する意見の対立で分裂したバプテスト派教会により形成された歴史があり、実現すれば175年の歴史で初となる。
米ヒューストン・クロニクル紙(英語)によると、現副理事長のローランド・スレイド氏(61)=メリディアン・バプテスト教会(カリフォルニア州)主任牧師=が、16日にも理事長候補に指名される見通しで、これまでのところ他に候補者がいないことから、そのまま選出される可能性が高い。
スレイド氏は11日、同紙の取材に応じ、初の黒人理事長に選出されることは「謙遜な思いにさせられる」と語った。
米国では現在、黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に首を押さえ付けられて死亡した事件を発端に抗議運動が拡大。SBCのジェームズ・デビッド・グリアー議長は10日、福音と関わる問題だとして、こうした抗議運動に支持を表明した。この中でグリアー氏は、奴隷制度擁護の立場で誕生したSBCだが、現在は民族的に非常に多様な教派に成長したと説明。しかし指導者層においてはまだ、こうした多様性が反映されていないとする考えを述べていた。
スレイド氏を推薦した理事のジャレッド・ウェルマン氏は同紙に対し、これまでのSBC内での働きを踏まえ、スレイド氏が「最も相応しい候補者」だとコメント。「この役目に最も相応しい人物がアフリカ系米国人であるということは、『神の国』の表れとして民族的多様性を追求するSBCにとって、また神がわれわれに宣教するよう命じている人々にとって、励ましとなります」と語った。
SBCは奴隷制度擁護の立場で誕生した歴史を持つが、1995年にはその歴史を正式に謝罪。教派内の非白人教会の割合は、1990年はわずか5パーセントだったが、現在は20パーセント近くにまで増加。ここ数年に新規開拓された教会も6割は非白人系で、2012年には初の黒人議長が誕生している。