私は、自分が卒業した東京大学のリバイバルのために使命をもって祈りつつ伝道してきた。「キリストを知る絶大な価値を、どうしても母校の学生と同窓生に伝えたい!」という熱い願いからである。
キャンパス内での定期的伝道集会、法律クラブの年一同期会での証し、学生新聞へのバイブル・メッセージの連載、学生・同窓生への個人面談、メール、文書による伝道等々。ささやかな働きであるが、主の恵みによって、予想をはるかに超える実を結んできた。印象に残る3人の個人伝道について書いてみたい。
ある時、東大法学部の学生が面会を申し込んできた。「弁護士になりたいのですが、司法試験に合格する秘訣を教えてください」と聞かれたので、「司法試験合格の秘訣は簡単ですよ。全知全能の神にお願いして知恵をいただけばいいんです」とヤコブの手紙1:5について説明したが、彼は何のことか分からず面食らっていた。
そこで、「世界の法律」の原点は「聖書の律法」であり、「聖書の律法」の原点はモーセが神から授かった「十の戒律」であり、この「モーセの十戒」は「心を尽くして神を愛し、隣人を自分のように愛せよ」すなわち「敬天愛人」というキリストの一言に尽きると話した。
彼が非常に興味を示してくれたので、引き続き、聖書について、キリストについて、信仰について、7時間以上も夢中で話してしまった。福音を語ったのは私ではなく、聖霊ご自身であった。彼はその後、法律よりも聖書に興味を抱き、神学部博士課程を卒業して牧師になり、今では、若い福音伝道者として各方面で活躍している。
その後、クリスチャンの知人の紹介で東大法科大学院を卒業し、司法試験に合格したばかりの弁護士の卵と面会した。「これから弁護士として働くにはどうしたらよいでしょうか?」という彼の質問に答えるためだった。私の弁護士としての体験を語っているうちに、「なぜ自分がキリストを信じるようになったのか」という話題になったら、心が燃えてきて、夢中になって4時間も話していた。彼はすごく緊張して聞いていた。初めて会った方に、長時間にわたり信仰の話をしてしまったことにハッと気付いて、心からお詫びした。最後は非常に気まずい思いで別れた。
彼を紹介した知人から翌日電話があった。「昨晩は遅くまでありがとうございました。お話を聞いているうちに本人は全身鳥肌が立って止まらなかったそうです。その場でイエス・キリストを救い主として信じたと言っていました!」。それを聞いた私も鳥肌が立った。福音を語ったのは私ではなく、聖霊ご自身であった。
またある時、東大卒の若い国際弁護士と面会した。「国際弁護士としての生き方について聞きたい」ということだった。この時も、自分の体験談を15分ほどした後に、彼の意向に反して、4、5時間も、夢中になって福音を語ってしまった。「すいません、疲れましたので、今日はこれで失礼します」と言って、彼は私の話を途中で遮り帰って行った。
「福音を語るなら、もっと日時をおいて語るべきだった」と非常に後悔して、わび状を送ったが、何の返事もなかった。1年以上たったある日、彼から突然メールが来た。「あの時は信仰のお話に心を強く打たれました。その後聖書を読んで近くの教会に通うようになりました。おかげさまで、先週の日曜日に洗礼を受けることができました。本当にありがとうございました」という内容に、私の方が心を強く打たれた。福音を語ったのは私ではなく、聖霊ご自身であった。
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