香港で拘束された刑事事件の容疑者を、中国本土に引き渡し可能にする「逃亡犯条例」改正案をめぐり、反対派のデモが大規模化している。9日には、主催者発表で103万人(警察発表24万人)と、1997年の中国返還以降最大となるデモに膨れ上がった。これを受け、香港のキリスト教界からも相次いで声明が出された。
香港聖公会の鄺保羅(パウロ・クン)大主教は11日、公式サイトで声明(英語)を発表。改正案が、香港に高度な自治を認める現在の「一国二制度」に対する「抜け道」になる可能性を指摘しつつも、賛成・反対両派に対し冷静になるよう呼び掛けた。
鄺大主教は、改正案をめぐる論争の過熱により、情勢不安から社会に分裂をもたらす暴力的衝突が発生してしまったと指摘。「改正案の賛成・反対両者を含め、すべての人に対し、直ちに冷静になり、この問題をどのようにすれば解決できるのかという議論に立ち返るよう求める。そうすることで、社会にこれ以上の混乱をもたらすことを防ぐことができる」と訴えた。
また「非合法な手段は、そのような手段に訴える人たちだけでなく、そうした人たちを愛する人々、またそうした人たちが愛する人々、さらには社会全体をも傷つける」と主張。特に若者たちに向け、自らの要求を合法的で適切な方法で表現し、非合法な手段に訴えないよう求めた。
その上で鄺大主教は、すべてのクリスチャンに対し、香港の安定化と問題の完全な解決のために祈りを求めた。
カトリック教会の香港教区も同日、声明(英語)を発表し、香港政府と市民に対し、何よりもまず社会の安定のために、自制と平和的な手段による解決を求めた。一方、香港政府に対しては、法的な懸念や市民が抱く不安に対して十分な説明がなされるまでは、改正案を性急に可決しないよう求めた。
香港基督教協進会(HKCC)は12日、緊急声明(中国語)を発表し、議長の蘇成溢(エリック・ソ)牧師が早急に、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官と立法会(議会)の梁君彦(アンドリュー・リョン)議長に面会する考えを示した。その上で、改正案が性急に可決されれば、混乱は一層長期化するとの懸念を示し、香港政府に対しては、改正案を一度棚上げし、議論のための時間を提供するよう求めた。また、デモが行われている地区の牧師や聖職者たちに対しては、デモ隊が暴徒化しないよう協力を求めた。
立法会では12日、改正案の審議が予定されていたが、若者を中心とする数千人の反対派が11日夜から周辺に集結。警察とデモ隊の間で衝突が発生し、現地メディアによると、20人以上が負傷した。この日の審議は延期されたものの、梁議長は11日の記者会見で、20日にも改正案の採決を行うとする考えを発表しており、香港政府も可決を目指す姿勢を崩していない。