キューバ革命(1953〜59年)の終結から60年を迎えたキューバで、革命後初となるカトリック教会が、同国北西端に位置する小さな町サンディノに誕生した。カリブ海に浮かぶ社会主義国の「信仰回復の新たな兆し」だとする声も出ている。
サンディノに建てられたのは「イエスの聖心教会」。米フロリダ州タンパにあるカトリック教会「セントローレンス教会」から、建設費の大部分をまかなう9万5千ドル(約千万円)の支援を受けて建設された。
聖堂は明るい黄色で塗装され、約200人を収容できる広さがある。1月26日に献堂式が行われ、キューバで建設が進められている3つのカトリック教会の中で、最初に完成した教会となった。
フロリダ州のセントピーターズバーグ教区の報告(英語)によると、献堂式に出席したセントローレンス教会のチャック・ドルンカスト神父は次のように述べた。
「小さいながらも信仰に満ちたサンディノの会衆によって教会が建てられたのは素晴らしいことです。この教会の座席は200人分ですが、献堂式には500人近くの人が出席しました」
同教区によると、革命勃発後、キューバではカトリック系の学校が閉鎖され、多くの司祭や信者たちが国外追放され、信仰を公に表明することさえもタブーとされてきた。
しかし先々代のローマ教皇、故ヨハネ・パウロ2世が1998年にキューバを訪問し、数千人もの信者を集めてミサを行ってからは、公の信仰表明を容認する動きがでてきた。また90年代には、キューバ共産党が入党要件から無神論であることを除外するという変化も起きた。
キューバは依然として社会主義国家ではあるが、同国の共産党政府はキリスト教に対してかなりの寛容さを示すようになっている。
同教区によると、サンディノのカトリック信者たちはこれまで、ミサや聖書の学び会、その他の集会を信者の自宅で行っていた。しかし聖堂が完成したことから、現地の信者たちは、今後会衆の数が増え、信仰的にも強められることを期待している。
ドルンカスト神父は次のように話す。
「置かれている状況のいかんを問わず、キリストは私たち一人一人が弟子をつくるよう呼び掛けています。キューバのこの小さな町の人々は困難な状況にあるにもかかわらず、その呼び掛けを実践する方法を見いだしています」
聖堂建設を監督したキューバ人司祭のシリロ・カストロ神父は米CNN(英語)に対し、キューバ政府とバチカンの関係が良好であったため、同国でもいつの日か新しい聖堂が建設されるだろうと考えていたと語った。島国であるキューバへの資材搬入が困難だったことから、完成までに約4年を要したが、「建設が完了したことは、夜から昼に移り変わったようなものです」とカストロ神父は言う。
サンディノ在住のアレイダ・パドロン・ザバラさんは、「最初の石が置かれた日から、(建物が)少しずつ大きくなっていくのを見てきました。忍耐したおかげでこの教会が与えられました」と話す。
キューバではこの他、首都ハバナと第2の都市サンティアゴデクーバでも新しい聖堂の建設が進められている。
米国際宗教自由委員会(USCIRF)の報告書(英語)によると、キューバは人口1100万人のうち60〜70パーセントがカトリック(サンテリアなどの民間信仰との混合も含む)で、5パーセントがプロテスタントだという。
キューバ政府は宗教に対する姿勢を緩めており、政府認可の宗教組織は55あるが、国内の信教の自由は依然として「乏しい」状況にあるとUSCIRFは警鐘を鳴らしている。
昨年のUSCIRFの年次報告書によると、キューバは信教の自由が懸念される「第2階層」の国に挙げられている。キューバ政府は「宗教指導者や信教の自由を主張する活動家を対象に、拘禁や度重なる尋問を含む妨害活動」に従事しているとUSCIRFは指摘している。
一方、ニューヨークにある福音派教会「インフィニティー聖書教会」の牧師で、2007年以降40回もキューバを訪れているウィリアム・デブリン牧師は、クリスチャンポストに対し次のように語った。
「私はこれまで(キューバ)政府との間でトラブルを起こしたことは一度もありません。私が教え、(キューバでの)宣教会議に同行したことのある数千人の牧師や宣教師、伝道者たちも同様です。キューバの福音派教会は著しい成長を遂げています。その牧師たちは自由に福音を宣(の)べ伝えています」
デブリン牧師は1月、キューバ東部の都市オルギンを訪れ、同市最大の教会の1つを牧会する牧師と会った。その牧師はキューバを「(宣教師の)派遣国」にしようとさえ考えているという。また、中東派遣の宣教師になることを志願しているキューバ人のクリスチャンが約20人いるとし、アラビア語が堪能なデブリン牧師は、すでにそのグループの訓練のための準備もできていると話した。