キューバのクリスチャン人権活動家が昨年、逮捕・投獄された事件の詳細が最近になって明らかになった。活動家の男性は、警察当局から家宅捜索を受けた上、聖書と十字架を没収され、禁錮3年半の判決を受けた。
キリスト教迫害監視団体「世界キリスト教連帯」(CSW、英語)によると、オーランド・ザパタ・タマヨ市民抵抗戦線のメンバーで反体制派のミサエル・ディアス・パセイロ氏は昨年11月、警察当局により逮捕された後、「未発生犯罪の社会的危険性」があるとして起訴された。
家宅捜索があったのは昨年10月22日で、パセイロ氏は聖書2冊のほか、十字架数本とロザリオ5つを没収されて逮捕された。さらに11月4日には、警察がパセイロ氏を殴打し、首にかけていたロザリオを引きちぎった上で、次のように言ったという。
「ミサエル、お前は反革命分子であるばかりかクリスチャンでもある。お前はわれわれを見習うべきだ。われわれは革命家だから、お前の神を信じない。われわれの神はフィデル・カストロだ」
パセイロ氏は当初、聖書を手にすることや司祭の訪問など、勾留中の基本的権利を剥奪されていた。こうした措置に対し、妻のアリアナ・ロペス・ロケさんは19日間にわたるハンガーストライキで訴えた。
CSWによると、このハンストの間、バルバロ・ゲバラ牧師がロペス・ロケさんの自宅を2回にわたって訪れようとしたが、警察当局から物理的に阻まれたという。ロペス・ロケさんはその後、夫の権利が尊重されると保証されたことから、ハンストを終えた。
牧師であり人権活動家でもあるマリオ・バローゾ氏によると、キューバの民衆が、革命家であり残忍な独裁者であったカストロの名を口に出すのは珍しいことではないという。複数回逮捕された経験があり、2016年に家族と共に難民として米国に逃れてきたバローゾ氏によると、一部のキューバ人は犯罪や汚職を隠すために、カストロを神呼ばわりすることがあるという。
「キューバでカストロの名を口にすると、不正や犯罪を覆い隠すのに役立ちます。これは、(カストロを神のように)慕っている人がカストロ自身のような達人なのではなく、むしろ彼の名を口に出すことで覆い隠せる利益があることを物語っています」
「そのような人たちは、内心ではカストロの行為をまねているのです。なぜなら、日和見主義者であり、ゆすり屋であったカストロにも覆い隠すべきことがあったからです。ですからカストロの信奉者たちは、自分たちの神であるカストロに似た者として行動しているのです。彼らは自分たちの神の悪い見本に忠実に従っているのです」
「カストロを神と主張する人のうち5パーセントは本当に彼をあがめているかもしれません。他の95パーセントは、ただの日和見主義者で、カストロの悪い見本をまねているにすぎません」
CSWによると、キューバでは昨年、信教の自由に対する違反行為が325件あった。過去2年の違反件数と比較すると多少は減ったものの、2011年以降、全体として増加傾向にあるという。
「CSWは、さまざまな教団・教派から報告された信教の自由に対する違反件数と深刻さが増大していることを深く懸念しています。これは、キューバ政府が宗教団体の活動やメンバーシップを統制しようとしていることを示しています」
「文書化された違反の多くは、過去に見られた違反のタイプと一致していました。例えば、恣意的な一時勾留、教会指導者への嫌がらせ、土地所有権に対する攻撃などです」
「しかし政府は、刑事告発の捏造(ねつぞう)により活動家や宗教指導者を脅迫したり、恣意的に国外への出国を妨害したり、彼らの子どもを標的にするなどして戦術を多様化させているようです」
「欧州連合(EU)や米国、他の国々の政府がキューバとの対話において、キューバにおける信教の自由や一般的な人権状況の改善を求めるために、各国の立場を利用することが不可欠です」