学生時代、通らねばならない関門であることは分かっていながら、なかなかなじめないものに「通信簿」があった。良くても悪くても、先生から名前を呼ばれて直接手渡されるこの代物は、なぜか好きになれなかった。特に、見開きページに掲載されている各科目の評定を上から順に追っていくのが嫌だった。
評価が良かったとしても、大きく深呼吸をついてから喜びに浸るし、評価が悪かったときは、思わずその場にしゃがみ込んでしまったこともある。それくらい学生時代の私は「評価される」ことに慣れていなかったのだ。
さて、一国の指導者、しかも世界第一の超大国「アメリカ」をかじ取りしてきた大統領の場合はどうだろうか。
来る11月6日、米国では中間選挙が行われる。これは就任から2年が経過した大統領への米国民から手渡される「通信簿」の意味合いが込められるという。厳密には、米国議会435の下院全議席と上院33議席(全体の3分の1)が改選されるというもの。しかし二大政党制となって以来、政党の評価のみならず時の政権への評価が国民によって審判されるという意味合いを持つようになった。
ご存じのように、米国大統領の任期は4年。そして下院議員は2年、上院議員は6年だ。上院議員の場合は、2年ごとに約3分の1が改選となるため、時期的に大統領任期のちょうど真ん中に当たるこの時期に変動期を迎えることになってしまう。
現在、日本の新聞各紙はこの中間選挙を「事実上の大統領への信任投票」と位置づけ、連日いろんな報道を展開している。例えば朝日新聞は、「トランプの時代 中間選挙2018」というシリーズを組み、10月14日では第1面から2面にかけて「『神の国復興』トランプ氏崇拝」というタイトルでトランプ支持派の現状を報告している。翌週の21日には、共和党が今回の中間選挙で苦戦しているさまを第3面で報告し、負けを見越して共和党が予防策に転じていることをレポートしている。
では、本国米国における宗教的支持母体(福音派・ペンテコステ諸派)はどんな反応を示しているのであろうか。残念ながら14日の記事に代表される「日本人から奇異に思える形式・スタイル」を紹介するやり方では、彼らの信仰の本質(宗教性文化)が見えてこないと言わざるを得ない。
11月の中間選挙を前に、米国の保守系キリスト教誌でもトランプ氏に対する評価をめぐり、さまざまな記事が掲載されるようになっている。今回はそれらの中から、彼らの信仰の本質を考察してみたい。
まずはクリスチャニティー・トゥデイ誌である。クリスチャニティー・トゥデイは、ある程度の知名度を日本でも持っている。1956年に創刊され、フラー神学校の教授陣とビリー・グラハム氏が協力して立ち上げた情報誌である。当時はリベラリズム優勢のキリスト教界だったため、彼らに対抗すべく保守的なキリスト教勢力がアカデミックな雑誌を発刊したいという願いを持つようになり、本誌が刊行された。
単に内向的な信仰者向けの雑誌ではなく、統計や文献を用いたり、リベラル陣営から論客を招いて議論を展開したりするような「開かれたキリスト教保守派」を目指す雑誌として、現在は福音派内で中心的な地位を占めるようになっている。
そこに10月11日付で掲載された記事が「牧師の半数がトランプの働きを肯定的に評価」(英語)である。
テネシー州ナッシュビルに本社を持つ「ライフ・ウェイ」という文書伝道の書籍を製作している会社が行った聞き取り調査によると、全体の51%の福音派牧師がトランプ氏の2年間の働きを好意的に評価しているという。詳細に見るなら、「とても評価できる」が25%、「まあ評価できる」が26%である。ちなみに「強く失望した」が22%、「幾分は失望している」が7%で、否定派の合計が29%となる。「よく分からない」が20%にも上っているのは問題だが、おおむね「合格点」ということらしい。
もちろん米国には福音派以外のキリスト教会もその倍以上存在しているため、これがそのままトランプ優位を告げるものではない。しかし、やはり2018年10月現在において、福音派(ペンテコステ諸派含む)がトランプ氏の支持母体の一角を担っていることは、これらの統計から明らかだと言わざるを得ない。
だが、これだけでは彼らの内面に迫ったことにはならないだろう。これらはあくまでも「統計」であり、決められた選択肢から1つを「選ばせた結果」に他ならない。
次回、トランプ氏支持を訴えるキリスト教保守派の中で、トランプ氏への向き合い方の変節を自覚し、その変化を赤裸々に語っている記事を中心に報告してみたいと思う。
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