「中間派」として知られる米連邦最高裁のアンソニー・ケネディ判事が今月末の引退を表明したことを受け、後任の人事に取り掛かっていたドナルド・トランプ米大統領は現地時間9日、首都ワシントンの連邦控訴裁(高裁)判事を務めるブレット・カバノー氏(53)を指名した。
カバノー氏はジョージ・W・ブッシュ元大統領の2期目2006年から顧問を務めるほどの共和党支持者。日本人に馴染みがあることとしては、ビル・クリントン元大統領が研修生のモニカ・ルインスキー氏と「不適切な関係」を持った事件で、ケネス・スター独立検察官の下、調査に協力したのがカバノー氏だった。スター報告書を執筆した1人でもあり、このことからも共和党への忠誠心を伺い知ることができる。
11年には銃規制に反対する声明を出し、同年から一貫して「オバマケア」と呼ばれる医療改革制度にも反対意見を述べ続けている。さらに、人工妊娠中絶容認と不法移民増加の間にも関連性があるという見解を発表していることから、やはり共和党大統領が指名するに十分な「保守派」ということになるだろう。
保守系で知られるFOXニュース(英語)は「これを機にロー対ウェイド判決(中絶を合法化したとされる判例)を覆すことになるのか」というところまで言及している。
ロサンゼルス・タイムズ紙(英語)も同様のトピックスを取り上げ、懸念を示している。
USAトゥディ紙(英語)は、カバノー氏の経歴と共に、彼が誰と対立し、どんな声明を発表してきたかを端的にまとめ、その人となりを紹介している。それによると、共和党内も決して一枚岩ではなさそうである。なお、出身はワシントンで、妻と娘2人の4人家族。宗教はカトリックだという。
1987年にエール大学を卒業し、同大ロースクールへ進み、法曹界で着実にキャリアを積み上げてきたカバノー氏。現時点での彼のコメントは「判事として私が抱く理念はとても明白です。判事職は独立しているべきで、法律を作るのではなく解釈しなければならないということです」というもので、教科書通りの回答となっている。
これから民主党による有形無形の「審査(攻撃?)」があるであろうから、上げ足を取られないよう、安全運転でいこう」と考えているのだろうか。しかし、その定型化されたコメントの故に、本当は保守的思想の持ち主ではないか、という臆測も呼んでいるようだ。
今後の行方を見守りたい。まずは彼が11月の中間選挙までに正式に上院議会で承認されるか、である。9月29日に上院議会で結論を出すことになっている。ここを通過すれば、連邦最高裁の判事は形式上、保守派5人、進歩(革新)派4人ということになる。しかし、今までの短期連載で何度も言及しているが、これらはあくまでも「今までの実績」から判断されたものであって、実際の決断には保守派も進歩派もない。常に動き続けていることは忘れてはならないだろう。
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