「世界精神保健デー」を迎えた10日、5年前に息子を自死で亡くした米サドルバック教会のリック・ウォレン牧師とケイ夫人が、心の病を持つ子の親たちに向けてメッセージを公開した。
ウォレン夫妻は2013年に、当時27歳だった息子のマシューさんを自死で亡くしている。マシューさんは長年、心の病に苦しんでいたという。
フェイスブックに投稿された動画(英語)で、ウォレン夫婦は「心の病を持つ子の親として、他の子どもたちにはどう接するべきか」という質問に答えている。2人は、自分たちもうまくできているわけではないと前置きした上で、これと決まった方法があるわけではなく「臨機応変な」対応が必要だと話す。
「ある人たちは、あるやり方に最善な方法を見いだし、また別の人たちは別のやり方に最善な方法を見いだします。そして、すべての子どもはもちろん、まったく違う存在なのです。子どもや配偶者に同じ時間を割くべきだというのは神話にすぎません。子どもというのは平等に扱うのではなく、一人一人をユニークに扱うべきなのです。ある子どもにうまくいくことが、別の子どもにもうまくいくとは限りません。すべての子どもを同じように扱う親は、良い親とはいえません」
リック牧師はそう言い、心の病を持つ子は時に「キーキーと音を立てる車輪」のようなもので、より多くの時間と心遣いが必要だと話す。「(それぞれの子どもには)難しい時期があり、その子に親のすべての関心が向きます。また別の時には、別の子どもが難局に直面し、今度はその子に親のすべての関心が向きます」
「より多くの関心が注がれる時があり、またそれほどでもない時もあるということです。しかし、私たちの誰もが大切な存在であり、互いを必要とし合っていることを(子どもたちが)理解できるよう手助けしてあげなければなりません。長い人生のある時期においては、自分より他の誰かにより関心が向いても良いのです」
身体的な病気を治すことが必要であるように、心の病も治す必要があるとリック牧師は言い、その事例として視聴覚障害者への対応を挙げた。
「目の不自由な人のために、家の中に障害となる物を置かないようにするのは当たり前のことです。心の病についても同じことが言えます。互いに心配りをする必要があるのです。聖書は互いに配慮し合うよう教えています。これは分かりやすい言い方ですね。つまり、互いを大目に見るということです」
「心の病の場合、そのような便宜を受けにくくなると思います。心の病は目に見えないからです」とケイ夫人も続ける。
「(この話を聞いている)今ここでは(心の病を持つ子どもたちに)注意を払うことを考えるでしょうが、しかし他の子どもたちの面倒も見ながらであることを考えてください。自分が理解できない病気を持つ子どもたち、しかしその子たちは本当に大変なのです。これが(心の)病であり、(その子に)時間と関心を向ける必要があるのです」
心の病を持つきょうだいと一緒に暮らすことは、他の子どもたちにとっても難しいことだとウォレン夫妻は話す。そして、他の子どもたちに、自分たちが軽視されているとか、無視されていると感じさせてしまったのであれば、親は謝ることが大切だという。
「私たちは互いに寛大な心を示すことができます。また、自ら進んで謙虚になって赦(ゆる)しを乞うこともできます。そうすることは、憤慨して傷つけ合うのを避けることになります」
ウォレン夫妻は、心の病を持つ子を育てる親たち自身のケアの重要性も強調した。毎日ストレスを発散できる何かをし、毎週1日は休みを取り、年に一度は子どもの元を離れて休暇を取る。リック牧師は「自分自身の感情のはけ口も必要です」と言い、定期的に気晴らしをするよう親たちに勧める。
「世界精神保健デー」(10月10日)は、世界中でメンタルヘルス(精神衛生)に関する意識を高め、メンタルヘルスの向上を促進する国際デー。ウォレン夫妻は長年にわたりキリスト教界でメンタルヘルスの重要性を説く中心的な役割を担っており、このテーマに関するカンファレンスを催し、メンタルヘルスに関する問題に取り組むことを多くのクリスチャンに促してきた。
動画の最後、ケイ夫人は次のように述べ、行動を促している。
「すべての人には、世界精神保健デーと心の病を持つ人のためにする役割があります。それは、心の病を持つ人があなたの周りに大勢いるということを意識することです。その意識を持って人生を歩むならば、あなたは今より親切になっていくでしょう。あなたは人に対してもっと優しくなるでしょう。あなたは赦しの心を持つ人になり、人を裁かなくなるはずです」
「この国の精神衛生法は公平ではありません。精神医療は身体的医療ほど手厚い保証を受けていません。どちらも健康の問題であることに変わりありません。弱い立場の人のために声を上げてください」