エジプトのコプト教徒が、今年のノーベル平和賞の受賞候補に選出された。民族的な宗教グループが選出されるのは初とみられる。コプト正教会系の国際慈善団体「コプティック・オーファンズ」(本部・米バージニア州)が25日発表した。
ノーベル平和賞の選考を行うノルウェー・ノーベル委員会は候補者名を公表していないが、同団体によると、エジプトのコプト教徒が受賞候補として正式に指名されたことが確認できたという。指名理由は、反キリスト教的暴力行為を受けながらも、報復を拒否したためだとされる。
ノーベル賞の公式サイト(英語)によると、今年のノーベル平和賞は、個人216人、団体115グループの計331組が受賞候補に選出された。これは、候補者数が376組あった2016年に次いで2番目に多い数字だという。
コプティック・オーファンズの声明(英語)によると、エジプトのコプト教徒は、ホスニ・ムバラク元大統領による長期独裁政権の崩壊につながった2011年の「アラブの春」以降、イスラム過激派などから執拗に迫害され続けているが、報復することなく、耐え忍び続けている。
キリスト教慈善団体「米国オープン・ドアーズ」の2018年の報告(英語)によると、エジプトのキリスト教徒はこれまでにないレベルの迫害に直面している。昨年は128人が殺害され、200人余りが自宅を追われた。昨年5月には、中部ミニヤ県で、コプト教徒を乗せ修道院へ向かっていたバスが武装集団に襲われ、少なくとも28人が死亡、25人が負傷した。
2011年10月には、迫害に対する抗議活動中に衝突が起き、20人以上が死亡、約200人が負傷した。また15年には、隣国リビアに出稼ぎに出ていたコプト教徒21人が過激派組織「イスラム国」(IS)に斬首される事件もあった。
キリスト教の一派であるコプト正教は、伝承では新約聖書の「マルコの福音書」を書いたマルコが、エジプトにアレクサンドリア教会を創設し、始まったとされている。エジプトは現在、イスラム教徒が人口の約8割を占め、約1割のコプト教徒は同国では少数派だが、中東に存在するキリスト教の教派としては最も大きなグループの一つを形成している。
同教会のトップは、2012年に就任した教皇タワドロス2世。著名人には、エジプトの国際法学者でアフリカ出身者としては初めて国連事務総長(92〜96年在任)を務めた故ブトロス・ガリ氏や、米国の現政権で大統領次席補佐官を務めるエジプト系米国人のディナ・ハビブ・パウエル氏らがいる。
今年のノーベル平和賞の受賞者は10月5日に発表され、授賞式は12月10日にノルウェーの首都オスロで行われる。