1948年7月13日に現在の母体保護法の前身である優生保護法が成立したことを覚え、人工妊娠中絶に反対する市民らによるデモ行進「マーチフォーライフ(March for Life)」(同実行委員会主催)が16日、カトリック築地教会(東京都中央区)を出発点に行われた。
国民の祝日である「海の日」を、命のために行進する「産みの日」にしようと毎年7月第3月曜日に行われ、今年は国内外から250人近くが参加。日比谷公園までの約1時間の道のりを「中絶やめよう」「小さないのちを守ろう」などと書かれたプラカードを持って笑顔で行進した。
行進の前には、カトリック築地教会でミサが開かれた。参列者は、「受精の瞬間から始まる人の命は、その一つ一つが神のかたどりであり似姿であるという真理を、多くの人々と分かち合わせてください。経口中絶薬の解禁に向かおうとしている日本社会を正しい方向に導いてください」と共に祈りをささげた。
中絶に反対する市民らによる同名の運動は世界各地で行われている。米国では、中絶に関する規制を一部で違憲としたロー対ウェイド事件の連邦最高裁判決が出た1月22日前後に毎年ワシントンで開催されるほか、時期をずらして各地でデモ行進が行われている。この日も、フィリピンや台湾、香港などで活動するキリスト教団体の関係者らが、日本での運動を盛り上げようと応援に駆け付けた。
台湾で未婚女性の出産支援を行う「希望之光」のアニータ・ヘバード代表は、「日本の活動を励ましたくて今回参加した。日本にあるすべての教会の皆さんが、罪のない子どもたちの血が流されることを望まない神様の御心に目を開かれ、この活動に参加することを願っている」と話した。
協力団体の一つ、「小さないのちを守る会」の辻岡健象代表は、「今年は海外から多くの協力者が集まった。何よりもカトリックとプロテスタントが一緒に活動できていることが良い。参加者は毎年増えていて、これからもっともっと増えていくように願っている」と話した。
行進の中に議員の姿もあった。昨年から参加しているという柏市議の上橋泉氏は、「今の日本が抱える一番大きな問題は、人間の命が大切にされていないこと。それを最も象徴的に示しているのが中絶」と話し、「われわれがもう一度人間の命の尊厳さに気付いて、中絶を減らしていく。これが、日本の活力を回復させることになる」と思いを語った。