ウォルト・ディズニー・カンパニーの映画製作子会社であるピクサー・アニメーション・スタジオは、「モンスターズ・インク」などの人気アニメ映画の監督で、敬虔なクリスチャンとして知られるピート・ドクター氏(49)を、映画製作全般の最高責任者であるチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)に任命した。
1990年からピクサー社で勤務するドクター氏は、当時世界初のフル3DCG長編アニメ映画「トイ・ストーリー」(95年)のシナリオライターおよびアニメーターとしてスタートを切った。初監督作は「モンスターズ・インク」(2001年)で、「カールじいさんの空飛ぶ家」(09年)や「インサイド・ヘッド」(15年)など、多数のディズニー・ピクサー映画の製作や演出を手掛けてきた。
「このような役目を与えられたことに興奮を覚えると同時に、謙虚な気持ちにさせられています」。ドクター氏はクリスチャンポストに寄せた声明でそう述べた。
「私はこのオファーを軽々しく考えていません。28年前にピクサー社で働きはじめて以来、ここでの映画製作の仕事が私の頭から離れたことはありません」
「私は幸運にも、世界で最も才能ある人たちと一緒に仕事をしています。私たちはこれからも力を合わせ、アニメ映画に新たな方向付けをしていきます。最新の技術を使い、世界中の観客に驚きと喜びをもたらすストーリーを伝えていくつもりです」
ドクター氏の就任は、前任のジョン・ラセター氏が不正行為疑惑で半年間の休職後に、CCOを退いたことによる。米エンタメ誌「ハリウッド・レポーター」(英語)によると、ラセター氏は多くの女性の同僚や協力者に対し、長年にわたって相手の意に反する身体的接触を強要した疑いが持たれている。
ラセター氏はピクサー社の共同創業者で、同社が2006年にディズニー社に買収されてからは、ディズニー本体の長編アニメ映画部門「ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ」のCCOも務めていた。自身もアニメ映画監督として「トイ・ストーリー」「カーズ」などの監督を務め、「アナと雪の女王」など数多くのディズニー映画、またジブリ映画の米国公開版の製作総指揮を務めてきた。
クリスチャンとして率直な物言いをするドクター氏は、自身の倫理感や信仰について、また、それらが自身のクリエイティブな仕事にどのように影響するかについて、常に公に語ってきた。
ドクター氏は、米教会情報誌「ラディックス」とのインタビューで次のように述べている。
「何年も前のことですが、私は初めて教会で話をしました。その時、私は信仰と自分の仕事について話したのですが、私は少し神経質になっていました。(信仰と私の仕事は最初)本当の意味で結び付いていませんでした。しかし、徐々に結び付くようになっていったのです」
「私は神様に助けを祈り求めますが、そうすることによって自分の仕事に必ず影響が現れるのです。(祈りによって)私は落ち着きを取り戻し、集中することができます。以前は仕事でストレスを受け過ぎていたのですが、今は一息ついて『神様、このことについて私を助けてください』と祈ります。そうすると本当に物事が見えるようになるのです。祈りは仕事だけでなく、人間関係にも役立ちます」
信仰はドクター氏の人生において不可欠な役割を果たしているが、あからさまなキリスト教映画を作るつもりはないとドクター氏は言う。
「私にとって芸術は、言葉で言えないものを表現することです」とドクター氏。「言葉で言い表したとしても、実際には言葉で表現できる範囲を超えています。自分の力を超える何かを伝えるために、人は自分にできることを何でもするのです」