「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展in熊本」(主催:同実行委員会、共催:熊本YMCA)が16日から21日まで、熊本県立美術館(熊本市)で開催される。入場無料。
山の上ホテルやミッションスクール、教会などの西洋建築を数多く手掛けたウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964)。1905年、英語教師として24歳で来日した3年後、京都に建築設計監督事務所(後の一粒社ヴォーリズ建築事務所)を設立した。ヴォーリズが設計に携わった建築の数は国内外で1500棟以上。その中で現存する60棟は指定・登録有形文化財で、昨年11月には、仏文学者の故朝吹登水子氏も幼年時代に過ごした軽井沢の旧朝吹山荘(睡鳩〈すいきゅう〉荘)も選ばれた。
その一方でヴォーリズは、米国で開発された塗り薬メンソレータム(現メンターム)を広く日本に普及させた実業家でもある。さらに、1912年から月刊誌「湖畔の声」を刊行、18年、私設のものとしては日本初となる結核療養所「近江療養院(近江サナトリウム)」(現ヴォーリズ記念病院)を開設、また『讃美歌』(1954年版)の236番「地の上(え)にまことのさとりはひらけて」を作ったり、ハモンドオルガンを日本で販売したりするなど、音楽にも長(た)けていた。
一粒社ヴォーリズ建築事務所によると、「これら事業のすべては収益を目的としたものではなく、『様々な職業を通じて、人間生活の基準となるような、キリスト的生活を徹底的に実践すること』を目指した、彼の伝道そのもの」だという。
同展では、サブタイトルを「建築からメンソレータムまで 人の心をつかんだヴォーリズ精神」として、ヴォーリズの多彩な働きを紹介する。期間中には記念講演会と連続講演会&トークセッションも行われる。
記念講演は姜尚中氏(熊本県立劇場館長兼理事長、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展in熊本実行委員長)が「ヴォーリズの生きた時代と日米の歴史」と題して17日(午後7時~8時半)に行う。場所は、熊本県立劇場大会議室(熊本市中央区大江2-7-1)。入場無料で、事前申し込みは不要。
また、連続講演会&トークセッションが20日(午後1時~4時半)、日本福音ルーテル熊本教会(熊本市中央区水道町1-21)で行われる。まず田淵結氏(関西学院院長、ヴォーリズ建築文化全国ネットワーク事務局長)が「ヴォーリズのキャンパス~彼の祈りのかたち」と題して講演。ヴォーリズが滋賀や近江八幡を拠点として、学校教育にも尽力していたことから、関西の大学には彼の手掛けた建物が数多くあり、中でも関西学院大学西宮上ヶ原キャンパスはその代表作の1つで、ヴォーリズ建築の最高傑作と言っても過言でない。
続いて石田忠範氏(石田忠範建築研究所代表、元一粒社ヴォーリズ建築事務所所長)が「ヴォーリズさんの設計室」と題して講演する。一粒社ヴォーリズ建築事務所の「一粒社」という社名は、ヴォーリズが戦時中、帰化して一柳米来留(ひとつやなぎ・めれる。夫人の姓と、「米国から来て留まる」という洒落[しゃれ])という日本名に改名したことに由来する。この講演会も無料で、事前申し込みは不要。
最終日の21日(日)には建築見学会も行われる。熊本コースと熊本・福岡コースに分かれ、九州学院ブラウン・メモリアル・チャペルなどヴォーリズ建築を建学する。こちらは有料なので、詳しくはホームページを。
「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展in熊本」の問い合わせは、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展in熊本実行委員会、熊本YMCA東部センター(熊本市中央区帯山2-1-11、電話:096・382・6661、ファクス:096・382・7928)まで。