キリスト同信会中野パークサイドチャーチ(東京都中野区)で12月1~3日の3日間、「クリスマス 光のコンサート」が行われた。今回のコンサートを企画したのは、ニューヨークを拠点に活動するゴスペルシンガーの西村あきこさんと、韓国在住のピアニスト瓜生(うりゅう)恭子さんの2人による「The salt of the earth mission」だ。
「このユニット名は『地の塩』(マタイ5:13)から付けました。次世代に福音を伝えるため、半年ほど前に企画し、米国と韓国で何度もやりとりしながら準備を進め、今年スタートしたばかり」と瓜生さんが言うと、西村さんも意気込みを語った。「私たちは2人で活動しているので身軽なんです。日本だけでなく、世界中どこででも公演ができます。これからも『地の塩』として活動の場を広げていきたい」
コンサートは、ハンドベルクワイア「アチェーロ」によるクリスマス曲の演奏と朗読劇という2部構成。朗読劇は、1、3日は「戦場のクリスマスキャロル」、2日は「DANIEL」。どちらも瓜生さんのオリジナル脚本だ。
「戦場のクリスマスキャロル」は、第一次大戦中の1914年、敵対し合う兵同士が共にクリスマスを祝ったという「クリスマス休戦」の実話に基づいたストーリー。最前線にいた英国軍とドイツ軍の兵士が一時的に休戦し、戦死者の合同埋葬式を行うだけでなく、酒やタバコ、チョコレートなどを贈り合ったという。
物語の主人公は、戦争で心に深い傷を負った老人。40年前のクリスマス休戦の時、ポインセチアの種を敵兵からプレゼントとして受け取った。その後、アルバムにしまい込んでいた種を見付けて植えたところ、40年の時を経て花を咲かせたのだ。敵兵から手渡された種が自分の国の土に根付いて花をつけるその姿から、人間同士が愛し合う喜び、希望の光を見いだすことの大切さが描かれる。
朗読に合わせて奏でられる瓜生さんのピアノの調べと西村さんの情熱的な歌声が、戦争の愚かさや悲しさ、そして赦(ゆる)し合う十字架の愛を伝え、観客の心を打った。
旧約聖書に登場するダニエルを描いた「DANIEL」では、テノール歌手の吉住和人さんが力強く雄々しい歌声を披露し、会場は深い感動に包まれた。
どちらの朗読劇にも、イラストレーターの小西由夏さんによる絵がスクリーンに映し出され、会場入り口にはその原画が展示された。
脚本を担当した瓜生さんが、物語の生まれた経緯を話してくれた。
「『戦場のクリスマスキャロル』は、クリスマス休戦のことを西村さんから教えてもらい、クリスマスの本当の意味を伝えられたらと、オリジナリティーのある内容を祈り求めて、与えられた物語です。
今も世界中で戦争が起こり、怒りや憎しみ、さまざまな感情が渦巻いています。そんな中でも、これから未来へ飛び立っていく子どもたちには希望を持って生きていってほしい。そんな祈りを込めて作りました」
朗読劇という形をとった理由について、西村さんは言う。
「これまでもクリスマスにはゴスペルコンサートを何度も行ってきました。もちろん、ゴスペルだけのコンサートも、お客さまと一緒に盛り上がることができ、すてきなのですが、歌い終わった瞬間に終わってしまう。歌に込められた本当のメッセージが伝わりにくいなと感じていたんです。ストーリーに歌を乗せたら、聞いてくださる方の心にも深く残るんじゃないかという思いから、瓜生さんとユニットを組むことになりました。
私たちは共にクリスチャンで、伝えたいメッセージは同じです。それは、どんな時代にも希望はあるということ。そして、希望は神様にしかない、ということです」
瓜生さんも、メッセージを伝えることの大切さを訴える。
「クリスマスの本当の意味を伝える上で、イエス・キリストの十字架、そして復活をはずすことはできません。クリスマスは、私たちの罪を贖(あがな)うため十字架で死んでくださった方の誕生日です。まるで命を失って干からびてしまったかのような1粒の種から美しい花が咲いたのを見て、1人の老人の心に希望と勇気が湧き、立ち上がることができました。そのことの背景には、十字架の死と復活の希望という2つのメッセージが込められています。『戦場のクリスマスキャロル』を通して、神様を知らない方にもこのメッセージを伝えていけたらと思っています。
また、西村さんはカトリック、私はプロテスタントなのですが、私たちが教派を超えた働きをすることで、両者がもともとそうであったように1つに戻る助けになれればと願っています」
「The salt of the earth mission」としての活動は、来年5月にジョン・バニヤン原作の「天路歴程」の公演を行うほか、秋ごろには「光のコサート」vol.2も企画している。
国境や教派を超えて福音を伝える2人の活動に今後も注目したい。