キリスト教徒であるインドネシア・ジャカルタ特別州のバスキ・チャハヤ・プルナマ前知事(愛称・アホック)がイスラム教を冒とくしたという一連の騒動で、西ジャワ州のバンドン地裁は、騒動を主導した元大学講師の男に対し、禁錮1年6月(求刑同2年)の有罪判決を下した。男は、プルナマ氏がイスラム教の聖典であるコーランを侮辱したように動画を編集したことで、ヘイトスピーチを広めたとして、情報電子取引法違反(改ざん・増悪表現)の罪に問われていた。ジャカルタ・ポスト紙(英語)などが伝えた。
同紙などによると、今月14日に有罪判決を受けたのは、ジャカルタにある私立大学「ロンドン広報学校」元講師のブニー・ヤニ被告。判決によると、プルナマ氏が再選を目指す知事選中の昨年9月下旬に行った演説について、ヤニ被告は同10月、演説の動画を意図的に編集し、プルナマ氏に対するヘイトスピーチを広めたとされている。
プルナマ氏はこの演説の中で、コーランを政治利用する政治家らを警告して「コーランの一節を使って惑わされているから、私に投票できない」などと発言した。しかし、ヤニ被告はこの発言部分を切り取った約30秒の動画をフェイスブックに投稿。投稿の説明では、「使って」という言葉を省き、「コーランの一節で惑わしている」とプルナマ氏が発言したように記していた。
この動画が拡散し、数万人のイスラム教徒がプルナマ氏を批判するデモを起こすなどした。抗議運動は現職州知事の投獄を求める声も上がるほどで、社会的混乱を引き起こした。
ヤニ被告は、プルナマ氏がイスラム教やコーランを侮辱したように見せるよう動画を編集したことを認めているという。当時は選挙戦の真っ最中であったこともあり、動画による影響などから、プルナマ氏はイスラム教徒のアニス・バスウェダン氏に敗れた。
その後、プルナマ氏はコーランを侮辱する意図はなかったと否定したものの、イスラム団体が告発。今年5月、冒とく罪により禁錮2年の判決を言い渡され、現在収監の身だ。裁判所は判決時、プルナマ氏が「合法的かつもっともらしく違法な冒とく行為を行った」としていた。
プルナマ氏の弁護団は、ヤニ被告の刑が軽過ぎるなどと、今回の判決を批判している。
弁護士の1人、イ・ワヤン・スディルタ氏は「ヤニ被告は混乱を起こしました。この判決から、アホック氏がまったく罰せられるべきではなかったことが明らかなのです」と述べた。
別の弁護士であるテグ・サムドラ氏はジャカルタ・ポスト紙(英語)に対し、ヤニ被告の刑が軽過ぎるとし、「アホック氏の判決よりも重いものであるべきです。加えて、彼は直ちに刑務所に送られるべきなのです」と語った。