インドネシアの首都ジャカルタがあるジャカルタ特別州で、この50年間で初となるキリスト教徒の州知事が誕生した。
先月大統領に就任したジョコ・ウィドド氏の後任として19日、副州知事であったバスキ・チャハヤ・プルナマ氏(48)が、中国系としては初めて、またキリスト教徒としては約50年ぶりに同特別州の知事に就任した。
しかし、同国のイスラム教保守派は、同氏の知事就任に反発している。だが、「学ぶ」を意味する「アホック」のニックネームで知られる中国系インドネシア人であり、キリスト教徒のプルナマ氏が、こうした妨害を受けるのは初めてのことではない。同氏はこれまでも、同特別州内で多数の抗議行動を行っている宗教的強硬派によって常に妨害されてきた。
9月には、イスラム防衛戦線(FPI)のメンバー約200人が、地域立法府の建物の前でデモを行った。グループのリーダーの一人は報道陣に、「異教徒をジャカルタの代表とすることは許されません」とコメント。「アホック・バスキ・プルナマ氏、私たちは彼のジャカルタ特別州知事就任を拒否します。彼には道徳観、倫理観がないからです」と語った。
先月3日には暴力的な抗議行動が起き、警官16人が負傷した。
今月10日に起きたさらなる抗議行動では、FPIのメンバーだけではなく他のイスラム教徒の団体からも2千人を超える参加者が集まり、ジャカルタ特別州の庁舎までデモ行進が行われ、プルナマ氏の任命をやめるよう政府に再び要求した。この抗議行動は、FPIの指導者であり、イスラム法学者・活動家であるムハンマド・リジク・シバブ氏により組織されたものと考えられている。FPIは、「世界中のイスラム聖戦機構からの誠実なサポートを受けている」との声明を発表している。
しかし、プルナマ氏はこの抗議行動が、自身の宗教や倫理観への抗議よりむしろ政治的なものではないかと示唆している。
インドネシアの憲法は信教の自由を保障しており、国全体としては穏健派が優勢だ。しかし、世界キリスト教連帯(CSW)は、近年好戦的な一部のイスラム教徒が少数派の権利に対し、「深刻で長期的な影を落とす」方策を押し進めることができていると伝えている。
今年2月に発表されたレポートでは、インドネシア国中で起こり始めた宗教的な不寛容さが、「民主主義、人権、平和、そして安定に価値をおく全てのインドネシア人に対する脅威となっている」と指摘している。
政党は「地方の宗教的に保守的な選挙権を持つ人々にアピールする必要に気づき、イスラム教徒に取り入っている」とCSWは言う。そして、「種々のイスラム過激派組織が出現し、政策の立案と実施に不相応な影響を及ぼしている」としている。
「インドネシアの多様性は多大な危難の中にあり、国内のほぼ全ての宗教的コミュニティーは危機にさらされている。宗教的な不寛容さは、かつては特定の地域のみに限定して起こっていると考えられていたが、現在では国内全体に広がっていることが明らかである」とCSWは警告している。