ミャンマー軍による弾圧により、隣国バングラデシュなどに逃れているイスラム系少数民族ロヒンギャの人道状況が悪化していることを受け、米国福音同盟(NAE)系列の慈善団体であるワールドリリーフが、支援のための緊急募金を行っている。
ワールドリリーフは声明(英語)で、ミャンマー西部の状況について「相次ぐ暴力で殺害された大多数はロヒンギャの男性たちでした。無数の未亡人と父親を失った子どもたちが後に残されました」と伝えている。ワールドリリーフによると、2カ月間で50万人以上のロヒンギャがミャンマー国外に逃れた。その大部分は女性や子どもたちだという。難民となったロヒンギャの多くが日々生きるか死ぬかの闘いにあり、食糧や飲料水、安全な避難所を確保するのに苦闘している。
ロヒンギャの大部分はイスラム教徒で、仏教徒が多数派を占めるミャンマーでは何十年にわたり差別を受けてきた。現在もミャンマー国内では無国籍扱いで、近年は拷問や殺害、強姦(ごうかん)などの被害が報告されている。
国連によると、ここ最近バングラデシュに避難したロヒンギャは43万6千人を超える。最近の避難は2回目の大規模脱出で、昨年10月の弾圧時には8万7千人が国外に避難した。国連の推計によると、バングラデシュのロヒンギャ難民のうち約6割が子どもだという。
ミャンマーからのロヒンギャ難民は、バングラデシュや自国にロヒンギャのコミュニティーがあるパキスタンなどが受け入れており、ワールドリリーフは両国のキリスト教徒と難民を受け入れている両国社会に感謝の意を伝えた。その上で、西欧社会の教会はすでに支援に当たっている現地の教会と協力する必要があるとしている。
「私たちのキリスト教信仰は、ロヒンギャの孤児や未亡人の世話をするよう、私たち自身を駆り立てます。ロヒンギャの多くの人々は、悲しいことですが、今、孤児や未亡人となっています。これは、世界で最も傷つきやすい人々に寄り添うことで教会が輝く機会でもあります。ワールドリリーフは、私たちが持つ資源が許す限り、ロヒンギャ難民を支援することに献身します。私たちはクリスチャンには祈りを依頼し、そしてこの問題に関心を持つあらゆる人々に対して、ロヒンギャの人々を支持するこの働きに加わるように勧めています」
ミャンマー西部のラカイン州では8月25日、分離主義者のグループとされる「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)が警察や軍の施設を襲撃。ミャンマー軍による弾圧は、この襲撃に対する報復として始まった。
ロヒンギャ弾圧はすでに、国際社会から大きな非難を招いている。2006年のノーベル平和賞受賞者であるバングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス氏は最近、国連安全保障理事会に対し、ミャンマー軍による民間人攻撃の即時停止のために行動を起こすよう求める書簡を提出した。書簡は「ミャンマー政府がロヒンギャの市民権を否定するために用いている議論はばかげている」などと訴えており、ユヌス氏のほか、ノーベル平和賞受賞者12人が署名している。
同じノーベル平和賞受賞者であるミャンマーのアウンサンスーチー氏は、現在は同国の事実上の最高指導者の立場にあるが、国の安全保障政策に関しては依然として軍部が掌握しているとされている。
反乱軍と政府軍による戦闘が数カ月にわたって繰り広げられているミャンマー国境沿いでは、ロヒンギャ以外の少数派も安全のために避難することを余儀なくされている。キリスト教徒も例外ではなく、今年に入って何万人ものキリスト教徒がマレーシアに避難した。