信仰を持ちつつ日本社会で仕事をすることに行き詰まりや悩みを抱える人は少なくない。2、30代の社会人や大学生を対象とした「信仰と仕事」フォーラム2017(主催:7Media Young Professionals)が18日、東京ユニオンチャーチ(東京都渋谷区)で開催された。連休最終日となった晴天のこの日、約100人の若者が会場に足を運んだ。
午前中は会堂で、賛美と祈りから集会は始まった。その後、米英で信仰を持ち、ビジネスの世界で成功している3人のビジネスマンの話を聞いた。
ベストセラーとなった『Quarter-Life Calling』の著者ポール・ソウン氏は、学生の頃から成績も良く、米国の名門大学に進み、子どもの頃から憧れていたボーイング社に入社した。収入も良く、役職も悪くなかった。好きな車を買い、家も選ぶことができた。まさに「アメリカン・ドリーム」の真っただ中にいたのだ。
しかし、ある日曜日の夜、不安と孤独に襲われ、寝付くことができなかった。身体は疲れているのに、心はカーレースをしているように騒ぐ。
「神様、どうして不安や焦りを感じて、私は途方に暮れているのでしょうか」と祈りのうちに尋ねたところ、今までの自分の祈りが、自分勝手に描いた成功のためだけにあったことに気付いた。ソウン氏は言う。
「神様の召しに従うことがいかに大切かが分かった。神様の召しは、有名になることでも大金持ちになることでもない。聖書に立ち返り、祈りの中で示されたことに従えばよいのだ」
午後から行われたワークショップでは、幾つかの部屋に分かれて、それぞれのスピーカーが講演を行った。その中で、DHLジャパン株式会社の人事本部長である遠藤明氏が、日本人の参加者を前に自らの経験を話した。
遠藤氏は現在66歳。前職は、世界でも名高い金融機関の1つだったリーマン・ブラザーズの人事部長だった。「リーマン・ショック」を機に、さまざまな業務整理をしたのち、定年退職の時期を迎え、一時はビジネスの世界から退いたが、知り合いから声が掛かって現職に就いた。遠藤氏は言う。
「私たちの仕事は、神様の栄光を現すため。牧師や神父など、選ばれた人だけが神様のための仕事をしているのではありません。聖書にはこのようにあります」と言って聖書を開いた。
「あなたがたは食べるにしろ飲むにしろ、何をするにしても、すべて神の栄光を現すためにしなさい」(1コリント10:31)
「私たちの仕事は、すべて神様が導いてくださったもの。私は給料をいただいていますが、それはたまたま会社の銀行口座を通して神様からいただいていると私は考えています。では、この仕事を通して何をすればよいのか。それは神様の良い証人になることです。仕事を真面目に一生懸命やること。そして成果を出すことです。信仰を理由にして仕事に手を抜くのではなく、むしろ110パーセントの力で臨むことではないでしょうか」
日本社会においては、いつの時点で自分がクリスチャンだと上司や同僚に話し、そこからどのように伝道をしていくかも大きな課題の1つだ。遠藤氏は、なるべく早いうちに「自分はクリスチャンだ」と相手に伝えることが必要なのではないかと、経験談として1つのエピソードを話した。
「私は一度、定年退職したにもかかわらず、なぜ今の会社に遣わされたのかと毎日、祈り、神様に尋ねていました。そして毎日、駅から会社に歩いている間に、十数名いる自分の部下のために祈っていたのです。『この橋にさしかかったら』と決めて、日課のようにしていました。その結果、聖書の話を2人の人にすることができ、さらに彼らは聖書勉強会にも来てくれるようになったのです。今年のイースターに彼らは受洗してクリスチャンになりました。本当にうれしかったですね。もしかしたら、私がDHLに遣わされたのは、この人たちに福音を伝えるためだったかもしれないと思いました。私は、そう遠くない将来、退職するでしょう。でも、この2人が職場で証人になってくれるのです」
信仰と仕事を両立させることは、すべては神のため。地位や収入がそれを証しするのではない。若者たちはそのことを先輩ビジネスマンから学び、連休最終日の1日を祈りで終えて帰路に就いた。