スイス2回目視察シリーズ ④
A ブセノのマドンナ・ディ・ファティマ教会
B エルストフェルトの高速道路のチャペル
A ブセノのマドンナ・ディ・ファティマ教会(Church of Madonna di Fatima)
設計者 マリオ・カンピ&フランコ・ペッシーナ
竣工 1987年 訪問日 2003年9月9日
車1台がやっと通れる細い道を上っていくと、山の中に台地が広がり、草原の一角に白いスチレンボードで作った建築模型のような小さい教会が現れた。静寂な山間の冷気の中にひそやかに建っている。
教会の建物は、その存在を強く主張するのではなく、慎ましやかにこの地を聖なる場所に引き立てている。
標高1060メートルの広い草原には、村の民家はあるが、人の姿も動物も何も見えない。眼下には雲がたなびき、あるのはただ静けさのみ。午前11時というのに、まだ早朝の新鮮な空気と霧に包まれ、1日が始まったばかりの様相を見せている。まさに神聖な場所。
B エルストフェルトの高速道路のチャペル(Chapel in Erstfeld)
設計者 パスカル・ギナールとステファン・ザーネル
竣工 1998年 訪問日 2003年9月9日
1996、97年に、ウリ州が高速道路のチャペルの建築案を公募した。当選したパスカル・ギナールとステファン・ザーネルの案に従って、1998年5月から11月にかけて、高速道路とロイス川の中間の土地に建設された。
立方体の建物を囲むコンクリート塀のエントランスを入ると、正面扉に向かって一直線に細長い泉が設けられている。聖書の詩編62:2の「わたしの魂は沈黙して、ただ神に向かう。神にわたしの救いはある」や他宗教の言葉などが刻まれており、「宗教は問わない」「自分を取り戻す所」「考える場所」との説明書きがあるので、いわゆるキリスト教の教会ではないのだと不思議に思いながら進む。
建物の中に入ると、正方形の空間を取り囲む壁のすそはベンチ状になっている。訪れた人は思い思いに座って静かに祈ることができる。私たちもベンチに座り、中央の四角い箱の中に置かれた水晶の原石の優しい光を見つめ、しばし沈黙の時を過ごした。心が静まる。すぐそばに高速道路が通っているが、外界の騒音からは遮蔽(しゃへい)されている。
外壁の四角い窓は、ステンドグラスかと思ったが、近づいてよく見るとガラス瓶の形がはっきり見え、二重ガラスの間に緑、黄色、茶色のビンのガラスの破片を入れて、光の効果を出している。こんな仕掛けになっているのかと驚き、印象に残っている。
ジュネーブ日本倶楽部(JCG)の会報「BONJOUR!れまん」(岸井敏牧師が書いているコラムの2006. 2月号)に掲載されたもの。ハチローは岸井牧師の腹話術芸名。(※本記事は、JCG広報編集委員会の了解のもと掲載しています)
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