2006年7月に「朝日新聞」や「週刊文春」によってカルト教団として報道された「摂理」。「すべては神の配慮によって導かれる」という考えから「摂理」という名称が生まれたらしい。発祥は韓国である。
正式名称は「キリスト教福音宣教会」(公式サイト)。「JMS」(Jesus Morning Star の頭文字というが、教祖の鄭明析〔チョン・ミョンソク、Jung Myung Seok〕の頭文字と思われる)や「CGM」(Christian Gospel Mission の頭文字)とも名乗る。また、「イエス教大韓監理教(メソジスト)」「真理」と名乗ることもある。
1978年に韓国ソウルで活動を始め、「MS(明星教会)宣教会」という名称でこの団体を立ち上げ、現在は「キリスト教福音宣教会」と名称変更されている。公称では、世界30カ国に300の教会を持ち、日本でも2千人の会員がいるとしている(実態は千人くらいだともされるが、詳細は不明)。
代表は鄭氏(公式サイト)で45年の生まれ。詩人、画家としての才もあり、多くの作品を残している。この団体の中では牧師の職位であるが、鄭氏だけが「先生」と呼ばれ、特別な存在として崇(あが)められていることが分かる。
この団体がキリスト教の異端とされている理由は、鄭氏がメシアとされ、統一協会の『原理講論』と同じような、鄭氏による『30講論』という本を持っており、この本をマスターすることで聖書が分かり、人生のすべての問題が解決されるという(鄭氏は統一協会の元信者であり、それを模倣したと言われる)。これに聖書と同じ権威を与えて教えている。
大学のキャンパスを主な活動場所として伝道活動を展開しており、日本でも東京大学、東京外国語大学、早稲田大学など、50のキャンパスに信者がいるといわれる。勧誘は、「摂理」の正体を隠して、いわゆる偽装サークルなどによって行われており、また、脱会者に執拗(しつよう)な引き留めをしたり、高校生にまで同様の方法で関わったりしていることは詐欺にあたると専門家からも指摘されている。この団体の日本本部が千葉市にあったため、千葉大学で活発な活動が行われ、行き過ぎた勧誘から、千葉大学側からキャンパスでの宗教活動の全面的禁止がされるという異例の出来事も起こった。
韓国国内では、2002年のサッカーワールドカップの際、摂理であることを隠し、「明るいほほえみ運動」という名称で行事などを行った。
活動として、ダンス、チアリーディング、サッカー、ゴスペル、英会話などのスポーツ活動や文化活動を用いて宣教を進めている。最近は、ネット上にも、第三者を装った摂理信者のサイトが数多く上がっており、ネットを使った勧誘が広がっているので注意したい。
基本的には、未婚の信者同士の交際は認められておらず、鄭氏が認めることで交際が可能とする。日本では、06年までに150組が参加した、いわゆる結婚式にあたる「祝福式」が行われている。その後は不明。飲酒は、霊が死んでしまうとして禁止されている。
1999年、テレビ番組で元女性信者が訴えたことにより、同団体は拉致監禁容疑で訴えられ、鄭氏はセクハラ(性的暴行)容疑によってキリスト教界や社会から非難を受けた。鄭氏は海外に逃亡したが、2001年に国際手配された。7年に及ぶ海外逃亡の生活費は、日本などの信者による献金で補充されていたことは間違いがない。
07年に中国北京で拘束されて韓国に送還され、法廷で10年の実刑判決を受けてから現在まで刑務所に服役中である。日本でも十数人の女性信者がセクハラ被害者として訴え出ており、鄭氏は入信する際、「健康チェック」と称してわいせつ暴行行為を繰り返していたという証言もある。
現在、摂理の活動は日本国内でも続けられている。摂理のサイトには、キリストも当時は異端と呼ばれたとして、自分たちを異端とする正統なキリスト教界からの批判をかわし、自らを正当化している。
しかし、その力は以前に比べて弱体化しており、大学キャンパスでの活動も制限されている。ただ、その活動自体は公にされていないため不明な点が多く、また鄭氏の釈放が間近であることから、その動向が注目される。
なぜ異端とされ、問題とされるのか、被害者が立ち上げているサイトが幾つかあるので参照されたい。
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