エルサレムのキリスト教会の指導者たちは、今月中旬に発生した銃撃事件後に、イスラエル治安当局が、エルサレム旧市街の「神殿の丘」の入り口に検問所を設置したことなどを受け、規制を解除し、イスラム教徒が自由に礼拝できるよう要請する公開書簡(英語)を発表した。
神殿の丘はユダヤ教、イスラム教の両宗教にとっての聖地で、ユダヤ教の「嘆きの壁」や、イスラム教の「岩のドーム」や「アルアクサ・モスク」がある。イスラム教徒にとっては三大聖地の1つで、「ハラム・アッシャリーフ」と呼ばれている。
この近郊で14日朝、イスラエル国籍を持つパレスチナ人3人がイスラエル人警察官2人を銃撃する事件が発生し、その後、イスラエル治安当局が数十年ぶりに神殿の丘へのアクセスを遮断した。また、この日はイスラム教の礼拝が行われる金曜日だったが、事件のために、神殿の丘内にあるアルアクサ・モスクでの昼の礼拝も中止された。イスラエル政府は16日に神殿の丘を解放するも、入り口に金属探知機を導入するなどして検問所を設置。これが、聖地を侮辱する行為だとして、イスラム教徒から大きな反発を招き、緊張関係が今も続いている。
公開書簡は、エルサレム総主教セオフィロス3世ら、現地の教会指導者が署名したもので、銃撃事件を非難し、犠牲になった人々に哀悼の意を表明している。しかし、書簡が強調したのは、神殿の丘のこれまでの体制を破り、人々が祈りのために出入りするのを規制することに対する懸念だった。「(こうした規制は)現在の宗教的緊張下で、最も歓迎されない、重大で予期せぬ結果をもたらすことになりかねません」と警告している。
世界教会協議会(WCC、英語)も、イスラエル政府による規制を抗議する声に加わった。WCC総幹事代行のイオアン・サウカ神父は、エルサレムに平和的解決がなされるように祈ってほしいと要請し、次のように語った。
「この聖なる場所において、歴史的に重要な今の姿を保ち、キリスト教徒、イスラム教徒、そしてユダヤ教徒それぞれに与えられている平等な権利を維持していくことは、平和を保ち、暴力を減らすのに最も重要なことなのです」
「はるか遠くから祈るためにやってくる何千人もの人たちにとって、この聖なる場所を訪れることができないとなると、個々人の権利の侵害にもなり、すでに危うくなっている平和をさらにむしばんでいく行為となってしまいます」
サウカ神父は銃撃事件が起こった日、礼拝が始まる昼前までに神殿の丘へのアクセスの規制を何とか解決してくれるよう要請したという。なぜなら、神殿の丘にあるアルアクサ・モスクには、金曜礼拝に参加する何千人ものイスラム教徒がやって来るからだ。
「イスラム教徒、ユダヤ教徒、そしてキリスト教徒は共存しています。今週のみならず、何週間先、何カ月先においても、正義と平和があるようにと祈ります」
こうした動きにもかかわらず緊張は高まり、事件から1週間たった金曜日の21日には、神殿の丘近くでイスラム教徒とイスラエル治安部隊との間で衝突が発生。これはヨルダン川西岸にも広がり、400人以上が負傷、少なくとも6人が死亡した。イスラエル政府は、25日には金属探知機を撤去したが、最先端技術を使用した別のセキュリティー検査システムを導入するとしている。