キリスト教精神に基づくNGO団体、ワールド・ビジョン・ジャパン(以下、ワールド・ビジョン)は、7日から3日間の日程で行われた北海道洞爺湖サミットにおいて、開発・アフリカ、および世界の食糧安全保障に関して出された声明について、G8諸国が何をすべきかを示し、途上国の子どもたちに対する配慮が盛り込まれたと評価する一方、それらの行動を可能にす資金に関して触れられなかったこと、また既に公約されている目標に関しても、具体的な資金拠出計画を示せなかったことについて非難した。その上で、2015年までに8つの目標達成を目指すミレニアム開発目標(MDGs)の達成がさらに危ぶまれると懸念を示した。
ワールド・ビジョンは、05年のグレンイーグルズ・サミットで決められた、2010年までに政府の途上国援助年間総額を500億ドル増額するという公約に関して言及されてはいるものの、各国の年間拠出額に関する意思表示がなされなかったことを指摘。目標となる2010年の中間年を過ぎた時点で、いまだに経済協力開発機構(OECD)が推計した増額分の14%までしか達成できていないため、今後著しい増額が必要であるとした。
一方で、今回のサミットでは初めて母子保健に焦点が当てられ、安全な出産への支援の必要性が明確化されたことは評価した。さらに、アフリカ諸国のコミットメントへの支援表明が出されたことも歓迎した。しかし、これらに関しても具体的な資金拠出に関する言及がない問題点を指摘。「国際保健に関する洞爺湖行動指針」で示された、年に1度の評価が確実に行われることが必要だとした。また、母子保健推進において日本の母子手帳制の使用が提唱されたことについても、実施に必要となる十分な医療従事者の確保に関して、資金的裏付けの必要性を強調した。
HIV/エイズ対策に関しては、「昨年より後退」と遺憾な結果だと評価した。昨年のハイリゲンダム・サミットでは、HIVの母子感染予防、小児治療に対する必要性が、資金ニーズとともに明文化された。しかし、今年の声明では母子感染に関しては言及されてはいるものの、昨年表明された資金に関する具体的計画の発表がなく、また小児治療とエイズ遺児に対する支援の必要性に関しては全く言及されてなかったため、「きわめて残念な結果」だと非難。2010年にはエイズ遺児の数が現在より300万人増加し、1800万人を超えるという、同問題の重大さを指摘した。
また、「万人のための教育(EFA)」の実現のための国際的な資金動員メカニズム「FTI(Fast Track Initiative)」に関しても、必要となる資金額10億ドルは認識されてはいるものの、具体的な拠出計画に関して言及がなく、昨年のサミットから進展が見られなかったとし、現状のままではEFAの達成は極めて難しいとした。