2017年三浦綾子読書会牧師会全国大会が22~24日の3日間、御茶の水キリストの教会(東京都千代田区)で開催された。読書会を開いている全国の牧師たちが集まり、三浦文学による伝道・牧会・説教の学びと、参加者同士の交わりと祈りの時を持った。
三浦綾子読書会(森下辰衛代表)は、クリスチャン作家の三浦綾子さんが召天した2年後の2001年、長谷川与志充(よしみつ)氏(東京JCF牧師)によって始められた。その諸作品について参加者がディスカッションしながら理解を深め合い、それを通して教会に導かれる人も起こされてきた。現在までに北海道から沖縄まで全国的な広がりを見せ、シドニーなど海外でも読書会が開かれている。長谷川氏は2011年9月に代表を退き、現在は顧問として会の運営、活動に尽力している。
初日のテーマは「牧師とは何か」。森下氏による講演「三浦文学が示す牧師像」があった後、スモールグループで分かち合いがなされた。翌23日の午前のテーマは「三浦綾子のメッセージ」。一般公開の特別講演が行われ、宮嶋裕子氏(同読書会講師)が三浦綾子の初代秘書を務めたエピソードを中心に語り、また森下氏が「『氷点』解凍」という題で講演を行った。午後のテーマは「三浦綾子読書会を知る」で、長谷川氏が「三浦綾子読書会の歩み」を説明した。その後、全国の牧師による「三浦綾子読書会事例紹介」が行われた。最終日の24日のテーマは「牧師としての再献身」で、森下氏が「神への献身」として自身の証しを語り、長谷川氏が「わたしの小羊を飼いなさい」と題して説教を語った。
牧師会は賛美と祈りでスタートした。長谷川氏は、「三浦綾子の作品は伝道目的に書かれた」と述べ、どのように会が発足し、広がっていったかを語った。1999年10月に三浦綾子さんが召天したとき、「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ」(ヨハネ12:24)の御言葉が示されて、まさに死が豊かな実を結ぶと確信し、また、主から「あなたが手に持っているものは何か」と問われたモーセが「杖です」と答えたように(出エジプト記4:2)、「私の手にある杖はまさに三浦綾子さんだ」と気付いたという。
参加した牧師たちからは、三浦綾子さんの作品がどのように伝道に役立てられているか、各教会の具体的な取り組みについて紹介され、作品の持つ魅力と伝道への有効性を再認識する機会となった。
松浦みち子氏(日本イエス・キリスト教団名古屋教会牧師)は、「教会独自の読書会をスタートしました」と紹介。篠原元氏(炎リバイバル教会伝道師)は、「作品は個人レベルで読んでいます。以前、同会の旭川ツアーにも参加をしました」と話した。
韓国出身の権ヨセフ氏(恵泉キリスト教会小平チャペル牧師)は、「2015年に教会で読書会を始めました。毎月1冊決めて、集まったメンバーと話し合いながら理解を深めています」と語った。教会だと人が入りにくいので、これからは近くの公民館で行うことで未信者も参加できるようにしたいという。
鮫島紘一氏(野上キリスト福音教会寄居チャペル牧師)は「教会で読書会を続けていて、7、8名が集っています」と報告した。また、図書館の部屋を借りて読書会を開いたところ、大勢の参加があり、この集いを通じて37人の新来者が与えられ、うち5人が受洗したという。「多くの人を集めるためにも、読書会は伝道の大きなポイントになる」
辻林和己氏(日本イエス・キリスト教団黒磯教会牧師)は、那覇平安教会に在任中に「那覇読書会」に参加し、今の教会では、三浦さんの小説を映画化した「塩狩峠」を上映したという。
最後に森和亮氏(日本長老教会ハイランド・キリスト教会牧師)が、「教会員は10人ほどですが、読書会を伝道に生かしています。三浦綾子さんは立派な伝道者です」と述べた。
権氏は言う。「三浦綾子さんの本は宣教目的で書かれています。韓国では若い世代はあまり知りませんが、たいへん人気があり、有名な作家です。ほとんどの作品が韓国語に訳されています。クリスチャンでない人が読んで興味を持つ内容ですし、恋愛や人間関係の面白さも描かれていて、読んでいて面白いです。読書会を通じて、日韓がキリスト教を通じて1つになれば」
このように、日本人クリスチャン作家の三浦綾子さんの作品が世界中で愛読され、それを通して多くの人がキリスト教に関心を持ち、救われていく。長谷川氏は、「今後の読書会のビジョンは、国内外の外国人への働き掛け」だと語る。三浦綾子さんの小説が全世界で「福音の架け橋」になることを期待したい。