「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展」(朝日新聞社など主催)が18日から東京・上野の東京都美術館で始まった。
見どころは何と言っても、ピーテル・ブリューゲル1世の傑作「バベルの塔」。旧約聖書11章のエピソードを、当時のアントワープを背景にして壮大かつ緻密に描いた作品だ。また、奇想天外な怪物たちが跋扈(ばっこ)する世界を描いた奇才、ヒエロニムス・ボスの貴重な油彩画2点も初来日。そのほか、同時代の絵画、彫刻、版画など計約90点が展示されている。7月2日まで。
ネーデルラント美術(フランドル美術)は、現在のベルギーとオランダにまたがる地方で14世紀末から16世紀末にかけて発展した。イタリア・ルネサンスに対して北方ルネサンスとも言われている。ブリューゲルは、16世紀ネーデルラント絵画を代表する巨匠だが、現存する油彩画は40点あまりと大変少なく、日本ではなかなか公開が難しいとされる画家の1人だ。そんな彼の傑作である「バベルの塔」が24年ぶりに日本に帰ってきた。
ブリューゲルは約60センチ×約75センチの板の中におよそ1400人もの人間を細密に描き込んでいるが、さらに目を凝らしてよく見てみると、その一人一人が塔の建設のために何かしらの作業をしているのが分かる。同展開催に合わせて来日したボイマンス美術館のシャーレル・エックス館長はこう話す。
「バベルの物語は、塔の破滅と人々の離散の物語だが、ブリューゲルは神の怒りよりもむしろ人々の挑戦の場面を描くことを選んだ。この作品は、答えのない質問も投げ掛けている。文化の素晴らしさは、答えのない問い掛けができることだ」
つまり、当時の抑圧的で形骸化したキリスト教が「宗教改革」と「ルネサンス」によって「いのち」を取り戻したことを、ブリューゲルはこの作品で描いたと言えるかもしれない。
この作品は、壮大な風景と驚異的に緻密な細部が1つの絵の中に凝縮されているところが傑作と言われるゆえんだが、同展では、どうしてこの作品を描くことができたのかをさまざまな角度からひも解いていく。
今回初来日となる「放浪者(行商人)」と「聖クリストフォロス」を描いたヒエロニムス・ボスは、人々の日常を描いた画家の先駆けといわれる。ただ、それだけでなく、「地獄と怪物の巨匠」とも呼ばれ、奇想天外な空想にあふれる画風で16世紀ネーデルラント画壇に一大旋風を巻き起こした。昨年はボスの没後500年にあたり、欧州で大規模な回顧展が開かれ、多くのファンが世界中から集まり、再び注目を集めている。
ボスは同時代人やブリューゲルら後続世代の画家にも大きな影響を与えており、同展では、ボスが描いた傑作を忠実にコピーした逸品「聖アントニウスの誘惑」(作者不明)や、ボスのモチーフを使って構成されたブリューゲルの代表的な版画作品「大きな魚は小さな魚を食う」などが展示されている。
また今回の展覧会では、ボスとブリューゲルを取り巻くネーデルラントの美術も紹介されている。聖アウグスティヌスら四大ラテン教父の像といった初期ネーデルラント彫刻や、ディーリク・バウツの「キリストの頭部」(1470年ごろ)、ヨアヒム・パティニールの「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」(1520年ごろ)などだ。
これらの貴重な作品を出品したボイマンス美術館は、オランダ・ロッテルダムにある、1849年に創立された国内屈指の美術館。今回、ボイマンス美術館に所蔵されているネーデルラント美術の名作の数々を通覧できるという意味でも貴重な展覧会といえる。
開室時間は午前9時半から午後5時半、金曜日は午後8時まで。休室日は月曜日(ただし5月1日は開室)。観覧料は、一般1600(1400)円、大学生・専門学生1300(1100)円、高校生800(600)円、65歳以上1000(800)円。( )内は20人以上の団体料金。中学生以下無料。4月19日(水)、5月17日(水)、6月21日(水)はシルバーデーにより65歳以上は無料。障がい者手帳所持者と介護者1人は無料。毎月第3土曜・翌日曜日は家族ふれあいの日により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2人まで)は一般当日料金の半額。詳しくは、同展の特設ページを。
※「バベルの塔展」のペア入場券をプレゼントします。応募締め切りは4月28日(金)まで。応募は ご住所とお名前、所属教会名を明記の上、[email protected] へ。当選者発表は賞品の発送をもって代えさせてていただきます。当選に関するお問い合わせにはお答えすることができません。