聖学院大学・大学院(埼玉県上尾市)で18日、卒業式があり、学部卒業者405人、大学院修了者23人が新たな舞台での飛躍を誓い合った。
卒業式は同大チャペルにおいて礼拝形式で行われた。3学部7学科、大学院3研究科の卒業生・修了生がそれぞれの学部カラーのガウンと学帽を身に着けて式に臨んだ。聖書朗読、開会祈祷に続き、同大聖歌隊による賛美がささげられた後、各学科、各研究科の代表者が清水正之学長から学位記を受け取った。
続く式辞で清水学長は、「天に富を積みなさい」と題して次のように語った。
「今年の卒業生は、高校生の時に東日本大震災を体験した世代。聖学院が被災地復興のためにさまざまな面で力を注いできたことは、卒業生の心に深く刻まれたことだろう。スクールモットーの『神を仰ぎ、人に仕う』は、社会においてこそ真の意味を持つ。新たなステージで、他者のためにかけがえのないあなたであってほしい」
また、「1つの成功、失敗があなたの人生ではない。慎重に、丁寧に、ある種の楽観主義をもって前に進んでほしい」と卒業生を励ました。
「小さな群れよ、恐れるな。・・・尽きることのない富を天に積みなさい」と聖書朗読されたルカによる福音書12章32~34節からは、このように語られた。
「他者を愛し、自らをささげて奉仕することは、天、すなわち、より高いところの価値に向かって私たちの業をなすこと。目先の利益や功利的なことではなく、真に自分が高いところの存在から照らされて、愛される時にこそ、私たちは善き隣人となる。これまでの聖学院での学びに誇りを持って、新たな一歩を踏み出してほしい。今後の歩みが、天の神の知恵と愛に守られ、その恵みの中で実り多いものとされることを祈ります」
式では、卒業生を代表してコミュニティ政策学科の石瀬美穂さんが感謝の言葉を述べた。就職活動の困難な時期を振り返り、「挫折感を味わう中で乗り越えることができたのは、包まれているという感覚、支えてくれる人がいるという安心感だった」と述べ、「社会人という新しいノートに未来の夢を描いていきたい」と旅立ちの決意を語った。
同大は、東日本大震災でのボランティア活動をきっかけに「ボランティア活動支援センター」を設置して、被災地だけでなく地域においてもさまざまな活動を行っている。今年の卒業生の中にも、在学中に東北復興支援ボランティアを続け、卒業後もその経験を生かして貢献していきたいとの志を持つ人が多い。こども心理学科の永松実梨(みのり)さんもその1人だ。
東日本大震災後、何かしたいと思いながらも動けないでいる自分が悔しいと思っている時に、同大のオープンキャンパスに参加した。そこで東北復興支援ボランティアチーム「SAVE」の活動を知り、1歳しか違わない人が現地に行って行動していることに心打たれ、自分もここに入ったら何かできるのではないかと強く思ったという。
入学後すぐに「SAVE」のボランティアツアーに参加し、岩手県釜石市で子どもや高齢者と触れ合ったり、清掃などのボランティアに取り組んだりした。4年間で13回、同市を訪れ、現地の人たちと交流を深めた。卒業論文のテーマも「釜石市のDNAをさぐる」だ。被災地で大変な状況でありながらも、常に前向きで明るく、逆にボランティアに行った自分たちが励まされるようなその優しさや強さの源を知りたくて取り組んだという。
4年間続けた中で一番印象に残っているのは、「支援される側は『ありがとう』しか言えないんだぞ」と一喝されたこと。永松さんはこの言葉によって自分の活動を問い直すきっかけとなり、「勝手な気持ちを押し付けていないか」「本当に相手の気持ちを考えているか」「自己満足ではないか」「相手が必要としている支援になっているか」を考えるようになったという。また友達からは、行動することの大切さを教えてもらった。
「釜石で『隣人を愛せ』を実現できたかは分かりません。でも、釜石の人たちがつらい状況にあってもボランティアの私たちのことを心配し、優しくしてくれる。私はその姿からいろいろなことを学び、受け取りました。現地に行くと、いつも私の方が力と元気をもらっていました」
永松さんは、4月から子育て支援NPOで働くことが決まっている。今後も別の形で釜石市と関わりは続けていきたいと話した。