大家族のひととき
登戸エクレシアキリスト教会(神奈川県川崎市)では、昨年11月から地域の子どもとその家族を対象にした「登戸こども食堂・海賊キッチン」をオープンした。毎週水曜日の午後5時から、2階のスペースを開放して、英会話教室に通う児童(未就学児)、地域の小学生たちとその親を対象に、食事と団らんのひとときを提供している。
普段は青木靖牧師が中心となって2人前後のスタッフと共に夕飯の支度に取りかかり、得意の料理を振る舞っている。そして、妻である敦子さんが手際よく料理を盛り付け、時に実家の平塚から来た両親に手伝ってもらうこともある。父親の和秋さんは、子どもたちを見ながら「にぎやかでいいねえ」と満面の笑みを浮かべる。
午後3時ごろから、未就学の子どもたちが訪れ、宿題をやったり、遊んだりする。5時になると、夕食の時間。「じゃあ、最初にお祈りするよー」と青木氏が呼び掛け、みんなで楽しく食事をする。そして6時からは英会話教室。すると、今度はお母さんたちの食事の番。それから一緒に片付けをする。さながら大家族のような温かな空間だ。
7時、ラストオーダーで、海賊キッチンは7時半に閉店する。
大人300円、子ども(幼児含む)100円と格安だ。「子ども1人でも、親子でも、気軽に食べに来てください。温かいおいしい夕ご飯を用意して、お待ちしています」と青木氏は言う。
お父さんでもある海賊キャプテン
青木氏はここでは「父親のような存在」。子どもに対しては、注意すべき時はきちんと注意するなど、一人一人に合わせた対応が上手だ。小学生の中には、基本的なあいさつができない子や、輪の中に溶け込めない子もいるが、あいさつの大切さを教え、信頼関係を築くように接しているうちに、子どもたちも変わっていくという。
「子どもたちや親も一緒にホッとできる場であってほしい」と青木氏は語る。
「海賊キッチン」というネーミングは、青木氏が重荷を持って取り組む子ども伝道から来ている。日曜学校や外部奉仕でキャプテン・ヤスとして海賊の衣装を身にまとい、海賊団(ユースの奉仕者)を率いて子どもたちに楽しく聖書を伝えている。
奥多摩バイブルシャレーの夏の小学生キャンプでも、青木氏は海賊のキャプテンとして講師を務めたことがある。参加した小学生に大好評で、そこで救いの確信を得た子どもや、自分が神様に愛されていることを体験できた子どもから多くの証しを聞くことができたという。
やらなかったことを後悔はしたくない
青木氏がこの働きを始めたのは、自殺救済活動等に取り組む「白浜レスキューネットワーク」理事長、藤藪庸一氏(白浜バプテストキリスト教会牧師)のもとを訪問したことがきっかけだった。
その時、藤藪氏が次のように語ったという。「自殺に至る生きづらさを抱える過程において、子どものころ、周囲に助けてくれる大人がいたか、いなかったかで大きく違ってくる」
そして、そこでの交わりを見て、青木氏は「これなら、うちでも始められる」と思い、この働きをスタートした。教会で子どもに関わっていく中でも、「この子はケアが必要」という小学生がいた。その子のためだけでもいい。そう思ったという。
実際に日本で経済的な理由から全く食事を食べることができない子どもは少ない。むしろ、「交わりの貧困があるのではないだろうか」と青木氏は語る。
「やらなかったことを後悔はしたくない」と青木氏。共働きが増え、子どもも大人も孤独を感じる時代。しかしそれは、教会が地域の役に立てるチャンスでもあるはずだ。
登戸こども食堂「海賊キッチン」は予約制。予約は青木氏(電話:080・3450・3573、メール: [email protected])まで。詳しくは、登戸エクレシアキリスト教会のホームページを。