最近出会った年配の書道の先生が、「温故知新、与古為新(おんこちしん、よこいしん)」という毛筆で書いた額をプレゼントしてくださいました。「あなたをイメージして書きました」と語られましたが、今の私の現状に響くと思って眺めています。
この先生は「咲く花よりも花を咲かせる土となれ」という意味があると解説してくださいました。全ての植物は枯れて、土になります。いい土がなければ、花は咲かないし、おいしい実もなりません。土は目立たない裏方の働きかもしれませんが、大切な役割を担っています。私はいい土になれたら本望だと思います。
「神は言われる。終わりの日に、わたしの霊をすべての人に注ぐ。すると、あなたがたの息子や娘は預言し、青年は幻を見、老人は夢を見る。その日、わたしのしもべにも、はしためにも、わたしの霊を注ぐ。すると、彼らは預言する」(使徒2:17、18)
これは旧約聖書の言葉を引用した使徒の働きの一節です。「あなたがたの息子や娘は預言する」、また、「その日、わたしのしもべにも、はしためにも、わたしの霊を注ぐ。すると、彼らは預言する」という表現があります。預言とは、神の言葉を預かって、語り、行動していくということではないかと思います。神の霊を受けることでごく普通の人々が霊的に成長し、大きな働きができるようになります。
「青年は幻を見、老人は夢を見る」とあります。夢というのは、過去の体験が脳内に蓄積され、脳内シナプスの刺激で表現されるといわれます。過去の経験が豊富な老人ほど活発に夢を見るということになります。青年は夢ではなく、幻を見ます。将来のビジョンを見るということですから、いかにも若者らしい素敵な話です。
しかし、幻は夢の中から生まれると思います。青年は、老人たちの築いた過去の経験やデータをステップにして飛躍していくのです。先輩世代は後輩世代にビジョンのバトンタッチをしていかなければいけないと思います。
あるクリスチャン実業家が映画伝道の応援のために鹿児島に来られたことがありました。この方は有名な企業でも経営の手腕を発揮されるとても有能な実業家でした。一緒に行動する機会があり、お見送りするときに私に話されたひと言がとても印象に残りました。「穂森さんはお金のことを心配しすぎていますね。お金のことはその道のプロに任せて、神様があなたに委ねておられる賜物を生かすことに専念されたほうがいいですよ」ということでした。
チャペル冠婚葬祭ということで、経営の道に進んだときも自分に適性はないと実感しました。銀行に融資の相談に行ったとき、資金繰り表と経営改善計画書の提出を求められました。これは世間一般ではごく普通のことなのですが、私には何のことかさっぱり見当がつきませんでした。ある会計士に相談すると、資金繰り表を1日で作成してくださいました。また、銀行の元支店長という方が経営改善計画書の模範を見せてくださいましたが、さすがにプロは違うということを実感しました。
経営の中で大切なポイントの1つは、どのような戦略を立てるかということです。聖書の中に経営戦略が示されていて、これらをバイブルメソッドとして活用し、成功している人は少なくありません。私は30年前に米国で教会成長の研修を受けたときに、バイブルメソッドについて学びました。商工会議所のセミナーの講師の話の中にもバイブルメソッドに言及される方がいて、聖書の言葉は経営にも通じるものがあると思いました。
イエス様の例え話の中に、費用の計算に関する話が出てきます。塔の建設の前に計算しないだろうか、ほかの王と戦いを交えようとするときに戦略を立てないだろかなどと、ルカによる福音書14章28~32節で語られています。
「小さい事に忠実な人は、大きい事にも忠実であり、小さい事に不忠実な人は、大きい事にも不忠実です。ですから、あなたがたが不正の富に忠実でなかったら、だれがあなたがたに、まことの富を任せるでしょう」(ルカ16:10、11)
「不正の富」とは「経済」のことであり、「まことの富」とは「宣教」のことだという解釈を聞いたことがあります。経済界で成功した人は、宣教活動においても活躍する可能性があることを示唆しているのではないかと思います。
青年が宣教のビジョンを持ち、バイブルメソッドを用いて活躍する人々が出てきたらと願います。日本の社会において経済界からも献身者が出てくるときに、ソーシャルビジネスの展望が開けるだろうと夢を抱いています。
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