三浦綾子原作の映画「母―小林多喜二の母の物語」が2月から、いよいよ全国で公開される。同作は、『蟹工船』で有名な小説家、小林多喜二の母セキの生涯を描いた作品だ。
貧しいながらも、セキの強い信念と愛に支えられ、多喜二は成長した。苦学が実り、銀行員という立派な職業に就いた。心優しい多喜二は、弟に高価なバイオリンを買ってやったこともあった。
しかし、日本は軍国主義へと時代が移り変わり、徐々に反戦、反政府活動への弾圧が厳しくなった。もともと、貧しい農家の出身であった多喜二は、権力者に対して反抗心を持っていた。ペンを持って、徹底抗戦することを心に誓うが、政府からの弾圧はさらに激しさを増し、多喜二も特高警察から目を付けられる存在になった。
銀行はこれらの活動が発端となり、解雇されてしまうが、小説は書き続けていた。潜伏生活などを経て、ついに1933年2月20日、特高警察からの拷問によって、せっかん死を遂げたのだ。
理不尽な死を遂げた多喜二を、母セキは受け止められずにいた。しかし、後にキリスト教と出会い、その信仰によって「赦(ゆる)す心」を抱くようになる。文字の読めないセキであったが、晩年は賛美歌を歌い、教会にも通っていた。
現在でも、多喜二の命日を記念して「多喜二祭」が、全国各地で行われている。「この多喜二の命日に合わせて、2月に映画を公開することにした」と山田火砂子監督は言う。
今回、小林家に乗り込む棒頭役で登場する進藤龍也牧師を推薦したという現代ぷろだくしょんの林秀樹さんは、「長い獄中生活の後に大伝道者になった明治・大正時代のクリスチャン好地由太郎になぞらえて、私は進藤先生を『平成の好地由太郎』とお呼びしています。今回、映画にご出演いただき、感謝しています。ぜひ、先生の登場シーンもお楽しみに」と話している。
2月10日には、東京の大江戸博物館大ホールで完成披露舞台あいさつが行われる。現在までに決定している公開映画館、自主上映の会場は次の通り。今後も、上映会場は増える予定だ。「製作協力券」はどこの会場でも使用可能。詳しくは、現代ぷろだくしょん(03・5332・3991)。
■ 映画「母―小林多喜二の母の物語」ダイジェスト版