12月15日に明石書店から発売予定の『ビジュアル大百科 聖書の世界』。「人類の古典としての聖書を1000点以上の図版と平明な文章によって解き明かす」「『聖書が体感できる』本」だという。
本書の総監修者は、アイルランド国立大学ダブリン校および教皇庁キリスト教考古学研究所で哲学、ギリシャ語、ローマ文明について学び、英国の出版社 Dorling Kindersley(DK)社から2014年に出版された『バチカン(The Vatican)』という本を編集したマイケル・コリンズ神父。日本語版監修者は、旧約聖書学・古代オリエント学者で上智大学神学部特任教授の月本昭男氏。監訳者は、立教大学、跡見学園女子大学兼任講師ほかを務めている、イスラエル考古学・旧約聖書学専攻の宮崎修二氏。
月本氏は本書に関するパンフレットの中で、旧約聖書も新約聖書も「人類の古典」であると述べた上で、「本書はそのような旧約・新約聖書を図版と平明な文章によって解き明かしてゆく。図版には、聖書の歴史的・文化的背景を示す考古学や博物学に基づく夥(おびただ)しい数の資料が用いられ、西欧世界に伝えられる美術作品がふんだんに紹介される。それらを通して聖書の歴史と思想が立体的に理解されるように編まれている」と説明している。「すでに聖書に親しんでこられた方々はもとより、これから聖書に触れようとする方々にも大いに楽しんでいただけるにちがいない。なかでも、福音書に描かれるイエスの物語の数々に旧約聖書が伝える預言の成就をみてとる点に、本書の特色があらわれる」
版元である明石書店は、本書の特徴について、「(1)聖書(旧約・新約)についての基本的な知識を本書一冊で完全に学ぶことができる。(2)聖書についてまったく知らない人はもちろん、信者である程度の知識がある人、キリスト教系学校の生徒や教会学校で学ぶ児童など、幅広い読者のレベルに対応できるわかりやすい記述。カトリック、プロテスタントなど宗派に偏らない記述に配慮。(3)絵画、地図、歴史的遺物や遺跡の貴重な写真など図版1000点以上を掲載し、旧約聖書・新約聖書の記述の順番に沿って解説。『ビジュアル要素を駆使して、聖書を面白く、わかりやすく語り直す』画期的試み。(4)見開きで1テーマを解説。どこから読んでも面白く、わかりやすい。たとえば有名なエピソード(旧約:カインとアベル、ノアの大洪水等;新約:放蕩〔ほうとう〕息子、カナの婚礼、よきサマリア人他)などを見開き2頁で図版とともに解説するためすっと頭に入ってくる」と述べている。
また、同社は続けて、「(5)聖書からの引用が非常に多く、本書と聖書の間を行き来することによって確実に聖書の知識が身につく。また、聖書を取り巻く歴史的背景についても相当の紙面を割くことによって、聖書に関する重層的な知識が得られる。(6)歴史的書物としての聖書の解説だけでなく、現代の私たちの生活の中で聖書がどのように生かされているかを考慮した解説。(7)充実した巻末資料:①『聖書に登場する主要人物』、②『聖書の地名一覧』、③『聖書で使われる度量衡一覧』、④『統治者一覧』、⑤『聖書の有名な引用句』、⑥『預言者一覧』、⑦『イエスのたとえ話一覧』、⑧『イエスの奇跡一覧』等々、他索引」と説明している。
本書のパンフレットには、本書の推薦者として、カトリックの岡田武夫東京大司教、聖公会神学院の佐々木道人校長、広島大学大学院総合科学研究科の辻学教授、立教大学文学部キリスト教学科の長谷川修一准教授、カトリックイエズス会士で聖イグナチオ教会の英隆一朗助任司祭、関西学院大学名誉教授で東京女子大学元学長の船本弘毅氏が、それぞれ名を連ねている。
岡田大司教は、「聖書は、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の三つの宗教にとって非常に重要な書物であるだけでなく、偉大な人類共通遺産であり、人生についての尽きることのない知恵の書であります」と記した上で、異なる文化・時代において成立した膨大な文書である聖書を味わうためには「手引きが必要」だとし、「本書はそのための適切な案内人であると考えます」と評価。「本書を多くの方々にご利用いただきたく、ここに推薦いたします」としている。
佐々木校長は、「本書は『ビジュアル』と名を掲げるほどに、大量な図版が用いられている。それらを眺めるうちに、子供達と礼拝を共にしていた思い出が甦(よみがえ)った」という。「図版の名画の作者も、子供の頃に聴いた物語から着想を得ているのかと思うと楽しくなる」などと佐々木校長は記した上で、「自ら聖書を読み、浮かんでくる映像との差異を楽しむのも一興であろうと思われる」と付け加えている。
一方、辻教授は「キリスト教が芽生えた土壌はユダヤ教であり、新約聖書は旧約聖書を前提にする」とし、「本書はそこに焦点を当て、旧約聖書の内容を紹介した上で、福音書をはじめとする新約聖書を解説することにより、キリスト教の成立をみごとに描き出す。聖書に題材をとる美術索引の豊富な紹介もよい」と評している。
また、長谷川准教授は、「聖書は説教じみた宗教書ではない。歴史のなかで紡がれた書物群である。だから、歴史に照らして読むとき、聖書の思想はくっきり浮かび上がる。その意味で、歴史資料を豊富に用いた本書は聖書を読むためのよき導き手となるだろう」と述べている。
そして、英助任司祭は、本書が「聖書が体感できる本」とされている点について、「聖書を直接読んでもよく分からないことも多い。文字だけだとイメージが湧かず、生き生きとした物語の面白さに触れられないのだ。ところが、この本は挿絵や写真を通して、感覚的に捉えることができる。(またコメントも短くて適切である)」とコメント。「神のことばは実に私たちの心身すべてを通して働いておられる。本書を通して、それをぜひ実感してもらいたい」としている。
さらに、船本氏は、「西洋文明の二大源流は、ヘレニズムとヘブライイズムであるが、聖書は後者の基礎となった書物であると言える」とした上で、「本書は、聖書への理解を深めるとともに、西洋文明の源流を明らかにし、さらにわたしたちの生きる東アジアの文明の根源へと思索を深めてくれるであろう」と述べている。
なお、本書の英語原書は、DK社から2012年5月に出版された『The Illustrated Bible』という本である。
B4判変型、本文512ページ、オールカラーで定価は本体3万円(税別)。2017年3月末日まで特別価格27000円(税別)。