日本キリスト教協議会(NCC)「障害者」と教会問題委員会はこのほど、7月26日未明に神奈川県で起きた相模原障がい者施設殺傷事件に関する9月25日付の声明をNCCの公式サイトに掲載した。
同委員会は声明で、「大きな衝撃と深い悲しみを覚えました」と述べ、「犯罪容疑者自身の『障害者はいないほうがよい』との言葉は、ヒトラーの優生思想の影響を受け、現実社会に根深い『功利主義的発想』から実際に何の役にも立たない障害者は『安楽死』させることがよいとの考えに基づくものでした」などと続けた。
また、「この事件を彼個人(一人の犯罪者)だけの問題としてはなりません」と訴え、「誰にとっても同じ時代の社会に生きる人々の考えや生き方の影響は大きく強いのではないでしょうか」と主張した。その上で、「表面的には『一人ひとりのいのちを尊ぶ・生きる権利は平等』と謳(うた)いながら、実際は社会的・経済的能力を持つ者がより高く評価される現実、その矛盾したひずみの中で生きる閉塞感の『はけ口』に、社会的弱者や少数者を差別し排除する人々が一部に現われて来ているのです」と指摘した。
さらに同委員会は、鮮明に思い起こすある先達の「鋭く深い言葉」として、「もし、社会が強い者(賢い者)だけで構成されていたら、その争い、闘いのために自滅したかも知れない。しかし、社会は弱い者、愛や配慮を必要とする者の存在によって、辛うじて保たれている」と記し、「人間の常識的な『功利主義的発想』を拒み、明確に障害者や少数者の存在意義が告げられています」とコメントした。
声明の最後で同委員会は、「キリストにある平和、キリストによる平和を求め、いかなる社会的・経済的価値観をも超えて、根源的な『人間の生命・いのち』を第一義的に尊重し合う共生社会を目指すことこそが、この地上の世界に真の平和をもたらす究極の希望であることを、私たちは信じ訴えます」としている。
NCCが関連している世界教会協議会(WCC)は、同事件に対する非難と哀悼の声を7月26日に公式サイトで伝えた(関連記事はこちら)。
なお、同委員会は11月19日(土)午前11時から午後3時まで、東京都千代田区の日本聖公会神田キリスト教会で、「命の大切さを見つめて―『ヘイトクライム』と『障害者殺傷事件』を乗り越えて―」と題し、2016年「障害者」週間(11月13~19日)の集いを開く。詳しくはこちら。