聖書の教えに基づいたプログラムを展開している依存症更生施設「ティーンチャレンジ・インターナショナル・ジャパン」(以下、ティーンチャレンジ)が今年、新たなプログラムをスタートした。
岡山県岡山市にあるティーンチャレンジの本部では今年から、農業を通じてニートや引きこもりのリハビリを行うプログラムを開始した。今までは半年から1年ほどの長期プログラムが中心だったのに対し、今回は最短で3カ月のコースもあるなど、依存度や引きこもりの度合いに応じてコースを選択することができる。
ティーンチャレンジはこれまでに、アルコール、ギャンブル、薬物など重度の依存症に苦しむ多くの生徒を受け入れてきた。今年、1年間のプログラムを終えた23歳の男性は、ボランティアで週に1度、近くの農家の手伝いに行っていた。いよいよ自立できるまでになったが、「農業が楽しい」と話し、農家の手伝いのためにさらに1年、岡山に残ることを決めたのだという。時を同じくして、ティーンチャレンジ・インターナショナルの会合で、短期集中プログラムの展開が立案、発表されたばかりだった。
同センター代表の木崎智之牧師は、「引きこもりは、英語でもすでに『Hikikomori』と表現されるほど、日本特有の社会問題といえます。ニート、引きこもりといった社会問題は、私たちが挑んできた依存症の問題と密接に関わっています。依存症に至る前の段階に、社会から断絶された世界に閉じこもる、いわゆる『引きこもり』があります。『引きこもり』は虫歯と一緒で、放っておいたら治ったということはありません。長期化する前に、何かしらの対処が必要です。引きこもる人の多くは、家に引きこもっていた方が楽だから引きこもるのです。そう思わないように、また思わせないように、こうしたプログラムがあります」と話す。
岡山市の現在の場所に同センターを設立するまでには、多くの苦難があったと木崎牧師は語る。「『依存症』の人々が自分たちの住む町に来るということに、地元からの大きな反発があったのです。私たちは伝道もしたい、地域に根差した活動をと思っていても、それどころではありませんでした。2年間かけて地域との話し合いを重ね、やっとセンターをオープンさせたのが、今から3年前。一時は、なぜこのような試練があるのかと毎日毎日祈り、その答えを待っていたこともありました。しかし、神様が全てを『益』としてくださる。感謝です」と話した。
一方で、農業に携わる人々の高齢化が進み、日本の食料自給率は悪化の一途をたどっている。木崎牧師の住む岡崎市内の農家でも、人手が足りないという話を耳にしていた。
昨年、生徒の1人がボランティアに行ったことで、さまざまな発見があった。始めた当初は、草取りなどの先の見えない農作業に嫌気がさしていた彼が、土を触り、真昼の太陽に照らされながら農作業を続けていくうちに「意欲」が湧いてきたというのだ。
受け入れてくれた農家も「人手が足りないので、非常に助かった」と話しているという。ここにヒントを得た木崎牧師は、「農家さんを少しでも助けることができて、それに従事する一人一人にも得るものがあるなら・・・」と事業化に踏み切った。
プログラムの中心は、聖書。毎日のディボーションや教会での奉仕、礼拝などはもちろん最優先となる。早寝早起きの規則正しい生活リズムで、禁酒、禁煙はもちろんだが、携帯やネットからも離れ、同じ悩みを抱える仲間たちとの共同生活を送る。そこに農作業を組み込むことで、実りや収穫の喜びを感じ、プログラム終了後は農業で自活していくためのサポートも受けることができる。
木崎牧師は、「創世記2章15節に『神である主は人を取り、エデンの園に置き、そこを耕させ、またそこを守らせた』とあります。農業は人間にとって初めての作業であり、命をつなぐ最も大事な作業だという意味ではないでしょうか。農業を通して、ここを訪れる彼らが神様のご計画と御心を知る良い機会になればと祈っています」と話した。
対象者は、施設の関係上10代から30代前後の男性のみ。同時期に6人から8人ほどを受け入れる。プログラムを受ける生徒の信仰の有無は問わない。詳しくは、ティーンチャレンジのホームページ。
<相談窓口>
電話:090・4835・0956(木崎)
※月~金 午前9時~午後7時
※秘密厳守・相談無料