1958年に米国の青年牧師が、麻薬やアルコール中毒の少年少女を助けるために始めた依存症更生の働き「ティーンチャレンジ」。聖書に基づいた共同生活を送る中で、多くの青少年が依存症から解放され、社会に貢献できる人間になっていった。日本では2005年に「ティーンチャレンジ・インターナショナル・ジャパン」が設立され、10周年を記念する集会が4月29日、金沢キリスト教会(横浜市)で開催された。集会では、オーストラリアから来日したマルコム&マージョリー・スミス牧師夫妻が講演したほか、ティーンチャレンジ・インターナショナル・ジャパンの理事として船津行雄牧師、山中知義牧師、野田詠氏牧師らがメッセージを取り次いだ。
マルコム牧師は講演の中で、ティーンチャレンジ・西オーストラリアで起きているさまざまな奇跡を証しした。センターを訪れたある若い女性は重度の薬物依存で、皆で祈り、瀕死になっていた彼女に聖書の言葉を伝えた。ほどなくして彼女は天に召されたが、地上での最期に、イエスを受け入れ、ティーンチャレンジのスタッフの手で天に送ることができ、遺族にもとても感謝されたという。
昼には卒業生ら12人が壇上に立ち、証しを語った。入学して半年になる訓練生のキョウセイ(21)さんは、2度少年院に入院。薬物、アルコール依存が強かったが、1度目の入院で「もう薬物には手を出さない」と心に誓い、少年院では成績も優秀だった。誰もが「変わった」と認めるほどだったが、半年もしないうちに再び薬物に手を出してしまう。多く人々からの支えがあったにもかかわらず、どこか満たされないでイライラし、何をしても喜びを感じられず、絶望感に支配されていた。薬物に溺れ、「自分には薬をやめられないかもしれない」と諦めかけていた矢先に、母親からティーンチャレンジを紹介された。
「ここに来て思ったことは、『もう、薬に頼らなくてもいい』と心から安心できたこと。ここには『平安』があると思った」。ティーンチャレンジで共同生活する中で、次第に心が満たされ、人の温かさにも素直に感謝できるようになっていった。この「平安」こそが神の愛だと感じ、今年1月に受洗したことを告白すると、会場からは大きな拍手とともに「アーメン!」「ハレルヤ!」と歓声が沸き起こった。残り半年の訓練生活も神に期待していると話し、「注射を打って虚ろな目をしていた僕はもういません。僕が苦しんでいる時もイエス様は僕と一緒に苦しんでくださった。そして、僕を救ってくれたのです」と笑顔で力強く語った。
ティーンチャレンジ卒業後、奈良県にある生駒聖書学院に入学し、昨年卒業したばかりの瀬上良太さん(31)は、もともと無神論者で、「死んだら、みんな同じ。この世なんて何の意味もない」と思っていたという。空虚感を埋めるために薬物に手を出すが、薬が切れると、さらなる絶望感が瀬上さんを襲った。薬物依存がひどくなり、精神科に入院。退院後も自宅に引きこもり、自殺まで考えたこともあったという。そんなある日、ティーンチャレンジの卒業生の証しを聞いた父が入学を勧めてくれた。キリスト教関連の施設であることにひっかかりを覚えるも入学。聖書を読み、祈り、礼拝をささげていくうちに、絶望の根底にあった「この世には意味がない」という思いが、「イエス様にあって、この世には大きな意味がある」という思いに変えられていった。
そしてある日、仲間たちと祈っていると、イエスが十字架を背負っている大きな絵が頭に浮かんだ。その時初めて、なぜイエスが十字架を背負わされているのかを真剣に考えたという。それが自分の罪のため、自分を救い出すためだったと気付くと、後から後から涙があふれ、止まらなかった。「神なんていない。イエスなんて、ペテン師だ」と毒を吐いていた過去を振り返り、「あの時もイエス様は十字架上で、『父よ、良太をお赦(ゆる)しください。良太は自分で何をしているのか分からないのです』と、とりなしの祈りをささげてくださっていた」と、涙をこぼしながら語った。最後には、「僕なんて生まれてこなければ良かったと思ったこともありました。でも今は、生まれてきて本当に幸せです!イエス様、最高です!」と叫んだ。
ティーンチャレンジ・インターナショナル・ジャパンのディレクターである木崎智之牧師は、「この働きは、本当に地道なものかもしれません。全員が更生への道をたどってくれればよいですが、途中でやめてしまう子も多くいます」と語る。しかし、希望は神の愛によって完全に変えられた卒業生一人ひとりだと言う。「神様に愛されていることを実感し、過去を悔い改め、愛されている自信をもとに、今度は自分と同じような過去のある青年たちを支援する。キリストにあって、この兄弟たちをぜひ支えていただきたい」と言い、寄付金で活動しているこの働きのために少しでも協力してほしいと話す。ティーンチャレンジ・インターナショナル・ジャパンの詳細は公式サイトで。