アメリカのセールスマン協会が最前線で働いているセールスマンを対象に行ったアンケート調査の報告を目にしたことがあります。何回ユーザーの訪問をするか、つまり何回であきらめるかという問いがありました。その結果、一回 ―48%、二回―25%、三回―12%、五回以上10%という数字が報告されていました。
手紙、電話、訪問による接触、コンタクトを五回以上なして初めて成功する可能性がでてくるというのです。何やら「うるさくてかなわないから、彼女のために裁判をしてやろう。さもないと、ひっきりなしにやってきて、わたしをさんざんな目に遭わすにちがいない」といった裁判官とやもめの関係みたいですね(ルカ十八章1―8)。
執拗さは時には大切です。何とかこの人をと迫る姿勢は伝道に欠くべからざるものでしょう。私はこの点で内気と人見知りが激しいゆえに大きなハンディを背負っています。
旧約におもしろいエピソードが記されています。イスラエルの王ヨアシュがエリシャの臨終にはべりました。その時、エリシャよりアラムに向かって弓を引き、矢を射ることを勧められました。
ヨアシュ王が矢を射ることを三度で終わった時エリシャは怒ってヨアシュ王に言いました。「神の人は怒って王に言った。『五度、六度と射るべきであった』」(列王記下十三章19)。
あきらめが早いのも考えものというべきところでしょうか。今度こそ、と不安や恐れを越えていく勇気、不屈の精神が伝道には大いに必要のようです。この点で淡白であることは反ってマイナスになるかも。
あのエジソンに向かって助手が「七〇〇回やったがダメだった、失敗しました」と言ったのに対しこう言ったとのこと。
「失敗したのではない。七〇〇回の失敗は財産だ。だから失敗と言うな。教育と呼べ」。
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山北宣久(やまきた・のぶひさ)
1941年4月1日東京生まれ。立教大学、東京神学大学大学院を卒業。1975年以降聖ヶ丘教会牧師をつとめる。現在日本基督教団総会議長。著書に『福音のタネ 笑いのネタ』、『おもしろキリスト教Q&A 77』、『愛の祭典』、『きょうは何の日?』、『福音と笑い これぞ福笑い』など。
このコラムで紹介する『それゆけ伝道』(教文館、02年)は、同氏が宣教論と伝道実践の間にある溝を埋めたいとの思いで発表した著書。「元気がない」と言われているキリスト教会の活性化を期して、「元気の出る」100のエッセイを書き上げた。