「夫の病死は先祖の因縁」などと脅され、世界基督教統一神霊協会(統一協会)に約2億2000万円の献金をさせられたとして、損害賠償を求めていた千葉県の女性(70)に、統一協会側が2億3000万円を支払うことで示談が成立していたことが8日までにわかった。全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)によると、統一教会側が1人に支払う示談額としては過去最高。
献金は05年までの約4年間にわたって行われ、06年8月に献金相当額の賠償を求める通知書を送付。統一協会側は当初、約1億3000万円を最高額として提示してきた。しかし、女性側は被害額との隔たりがあるとして、統一協会を所管する文部科学省に対して「国の責任も追及する」という内容の通知書と訴状案を昨年12月に送付した。その後、統一協会側が歩み寄り、先月になって献金額を約1000万円上回る解決金を支払うことで合意したという。
昨年7月の東京高裁の判決(確定)では、統一協会側に原告1人に対して約2億7600万円を支払うよう命じており、これが民事訴訟では最高額となっている。
今回のように統一協会側が実損額を上回る支払いをする和解は珍しく、文部省による事業停止などの措置を避けたいという思惑が働いたのではないか、敗訴する可能性が高いと判断したためではないか、などと分析する声がある。
宗教法人法は、文科省が事業停止を命じたり、裁判所に解散命令を求めたりすることができる、と定めている。また、裁判所は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などが認められる場合は、該当宗教法人の解散を命ずることができる、と定めている。
宗教法人の活動に対する停止処分としては先月26日、「家族全員地獄に落ちる」「2年後に死ぬ」などと語り、高額の祈祷料や仏具代を支払わせていた「幸運乃光」(「高島易断総本部」の名で活動)に対して、経済産業省が特定商取引違反(不実告知など)に当たるとして、宗教法人に対して初めての業務停止命令を出している。
統一協会の広報部は、今回の和解が「信者間の和解」であるとして法人との関係を否定。信者のプライバシーに関わるとして、コメントは控えている。