【ユトレヒト(オランダ)=ENI・CJC】(アンドレアス・ハビンガ記)オランダの極右政治家がコーラン(イスラム教の聖典)を題材にした映画「フィトナ」を制作したことでイスラム世界の反発も予想される所から、プロテスタント教会のバス・プレジエ総幹事を団長とするキリスト者とイスラム教代表団が、公開前に事態沈静を図るためエジプトを訪問した。
オランダの教会とイスラム教共同体は、市民の大部分と共に制作者ヘールト・ウィルダース氏の挑発的な描写には反対だが、言論の自由に関する権利が存在することから、オランダ政府が映画を禁止は出来ないことを理解してもらうためのもの。
しかし代表団が3月25日にシャイフ・ムハンマド・サイード・タンタウィ氏と会見したが、このメッセージではエジプトの宗教指導者を納得させるのが困難なことが明らかになった。タンタウィ氏は、世界のスンニ派イスラム教徒の霊的な権威。「オランダ議会の1議員が15億人のイスラム教徒を侮辱する。耐え難いことだ」と述べた、と訪問団は報告している。
タンタウィ氏は、アル・アザル・モスクの大イマームであり、関連して設置されたカイロのアル・アザル大学の大シャイフ。アル・アザルは名門スンニ派団体の一つ。
代表団とタンタウィ氏の会談は予定より1時間短く30分で終わった。「この問題への反応がアラブ世界では非常に感情的なものであるかが明らかになった。映画は火遊びをしている」と、プレジエ総幹事は会談後語った。
大イマムは24日にオランダのティエール・ドズワアン大使との会談に不快感を表明した。大イマムは、大使がオランダの言論の自由権利を擁護するだけで、イスラム教徒の感情的な反応に対する感覚がない、と確信した、とオランダのキリスト教紙『ネーデルランド・タグブラット』は報じている。同紙はさらにオランダ大使が代表団のメッセージ伝達を妨害した、と言う。
「私たちは初め大使館の代理者と見られた。オランダ政府を代表しているのではないとタンタウィ氏に納得させるのは難しかった」と、プレジエ氏は報道陣に語った。
エジプト政府によって任命されシャイフは、代表団の任務に謝意を表したものの、オランダのイメージは回復不可能なほどに損なわれた、と警告している。
エジプト訪問は、オランダでプロテスタント教会とイスラム教の2組織が3月17日、声明に調印した直後に計画された。訪問の目的は、アラブ世界に声明を提示することにもあり、3月26日にカイロでの記者会見でこれを実現したことになった。
代表団はプレジエ氏の他、教会協議会のトン・ファンエイク氏、ムスリム=政府関係委員会のアーメド・ドリス・エルブジュフィ議長、オランダ・ムスリム評議会のアブデルマジド・カイロウン議長らで構成された。