2003年のイラク侵攻後、疲弊した同国で、教会を爆破され、誘拐されて拷問を受けたイラク人カトリック司祭が、その体験を語った。
米宗教誌「ファーストシングス」のインタビューによると、イラク人司祭のダグラス・バジ氏は米国主導のイラク戦争当時、イラクのバグダッド教区で仕えていた。バジ氏はイスラム教シーア派民兵らに捕らえられ、テープで口を塞がれて車のトランクに入れられた。その後9日間にわたり、殺害される脅威にさらされたという。
バジ氏は、イラク侵攻後に起こった出来事について次のように語った。「(イスラム主義者による暴力が始まったのは)2004年初めのことでした。06年初めに、彼らは私の目の前で教会を爆破しました。また別の時には、私はミサを行っていました。普通の日曜日で、私たちはミサを挙げていました。私が導いていると、爆音が聞こえたのです。その音が何の音か、私は知っていました。ロケット弾です」
バジ氏はまた、誘拐された時のことについて次のように語った。「あれは日曜日のミサの後でした。その時、私は友人を訪ねようとしていて、1人でした。民兵たちは私を車のトランクに入れました。彼らが私を捕らえた理由は分かりません。彼らが捕虜を収容している場所に到着すると、『目隠しをやるから、自分で縛れ。目を開けたら撃つぞ。頭にぶち込んでやるからな』と言われました。民兵の1人が、膝で私の顔を蹴りました。私が起き上がると、顔から血が出ていました。私は家の中に連れて行かれ、民兵たちがこう言っていました。『何でこいつを捕らえたんだ。お前たちは異教徒を連れてきたのか』。彼らは鎖を持ってきて、私の両手を縛りました。そのまま私は9日間過ごしたのです。縛られ、目隠しをされたままでです」
しかし、思いも寄らず、民兵たちはカトリックの司祭であるバジ氏に霊的な助言を求めてきたという。「昼の間、私は彼らの霊的な父になりました。民兵たちは私に助言を求めてきたのです。そのうちの1人は、自分の妻についていつも尋ねてきました。彼の妻は、要求ばかりしてくると言うのです。そう聞かされた私は、『分かりました。奥さんに、あなたが気遣っていることを示してあげなさい。奥さんにメールを送ってあげるのです。たとえば、おはようと言ってあげなさい。時々メールを送って、気遣ってあげなさい』と答えました。ところが夜になると、同じ民兵たちが『異教徒め』と言って私を殴り、拷問しました」
民兵たちは、教会と米国の関係についてもバジ氏に尋ねた。「民兵たちは政治に関してもいろいろ聞いてきました。宗教についてもです。たとえば、『教会と米国はどういう関係だ』と尋ねてきました。私はカトリックの司祭ですから、当然そのようなことは知りません。すると彼らは私を何度も殴り、ひどく傷め付けました」
バジ氏は13年7月、首都バグダッドからイラク北部のクルド人自治区の都市アルビルに移り、現在は約400人からなる会衆に仕えている。