2006年、渋谷区広尾に誕生した「JICA地球ひろば」。「市民参加による国際交流の拠点」として設立された。12年には、現在の新宿区市ヶ谷に移転。体験ゾーン、展示スペース、世界の食事を味わうことのできるカフェも備え、昨年までに来館者120万人を達成している。
5月28日、同館では「設立10周年記念感謝祭」が開催され、NGO団体、国際協力団体ら70団体がブースを出展。活動紹介やフェアトレード商品の販売などを行った。天候に恵まれたこの日、約1150人が同館を訪れた。
主催したJICAの担当職員は、「地球ひろばは、『見て』『聞いて』『触って』をテーマに、五感を使って世界を感じてもらうのも目的の一つ。世界では、さまざまな問題があるが、『知る』ことは国際貢献の第一歩だと思う。これからの国際貢献は『官』の力だけではなく、民間と協働することが必要。感謝祭がそのきっかけになれば」と話した。
JICA登録団体のうち、今回の感謝祭には70団体が出展した。担当職員は「登録団体同士、またJICAと登録団体も直接会って話す機会は少ない。10周年目の今回、登録団体の一部ではあるが、顔を合わせて話をすることができてうれしく思う」と話した。
館内いっぱいに展開されたブースでは、世界で貧困にあえぐ子どもたちを支援している団体、女性を中心に支援している団体などが活動報告を行っていた。フェアトレード商品を販売する団体も多く、アクセサリーや布製品、コーヒーや紅茶などが並んだ。ウィンドーショッピングのようにそれらを見ながら、団体関係者と会話を楽しむ参加者の姿も多く見られた。
音楽ステージでは、ブータン民族音楽、パラグアイ・ハープの演奏のほか、元青年海外協力隊によるカルチャーグループ「Aha3de(アハエデ)」の舞踊も披露された。「Aha3de(アハエデ)」は、青年海外協力隊としてガーナに派遣されたOB、OGが広くガーナを知ってもらおうと結成。在日ガーナ人もメンバーに加え、各種イベントなどで舞踊を披露したり、ワークショップを行ったりしている。
陽気なガーナの人々を思わせる楽しいダンスと軽快な太鼓の音色に、会場は一気にアフリカの太陽に照り付けられたように明るくなった。鮮やかな衣装をまとったメンバーに話を聞くと、「ガーナ人は陽気でおせっかい。日本からは遠く離れているが、少しでもガーナを知るきっかけになればと思っている」と話した。
また、カトリック信徒で、特定非営利法人日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)のスタッフ芦澤礼子さんは、「国際協力や支援の活動を考えるときに、思い浮かべる一つの御言葉がある」として、「あなたがたは地上に富を積んではならない。そこでは、虫が食ったり、さび付いたりするし、また、盗人が忍び込んで盗み出したりする。 富は、天に積みなさい。そこでは、虫が食うことも、さび付くこともなく、また、盗人が忍び込むことも盗み出すこともない」(マタイ6:19、20)を示した。
「NGOの仕事は、宝を天に蓄えるようなもの。経済的な豊かさを求めるのではなく、この地上をより良きものにするために働いていると感じている」と話した。
ますます混迷を極める国際情勢の中、「JICA地球ひろば」は新たな10年、20年に向けて走り出した。