京都市の有形指定文化財に指定されている京都ハリストス正教会で、昨年から半年間かけて行われていた修復工事が完成し、生神女(しょうしんじょ)福音大聖堂で22日、修復成聖式が行われた。
同聖堂は、平等院鳳凰堂など古寺社の修復、京都府府庁旧本館、中国の旧大連市役所の設計を行った建築家、松室重光(1873~1937年)によって1903年に建築されたロシア・ビザンチン様式教会堂で、ビザンチン様式の木造の教会としては国内で最も古い建築物だという。14年ぶりの修復工事では、鐘楼への階段や手すりの補強、古い配線の改良のほか、内装や窓周辺の補修と塗装も行われ、建築当時の真っ白な美しい姿を取り戻した。
この日は日本ハリストス正教会の府座主教であるダニイル府主教座下によって聖体礼儀が執り行われた。聖堂の中の一同によって「ハリストス死より復活し死をもって死を滅ぼし墓にある者に命を賜えり」「聖なる神、聖なる勇毅、聖なる常生の者や、我らを憐れめよ」と3度繰り返された後、ダニイル府主教によって、
「神、世々に崇め讃めらるる、我らの主、イイスス・ハリストスの父よ。爾は爾の子の肉の幕をもって喜びの声と彼の祝う者の住まいなる天に録されたる首生の教会の門を我らに開き給いし者なり。人を愛する主宰よ、自ら我ら罪なる当たらざる爾の僕婢らと爾の至尊なる教会を象るこの聖なる堂『京都生神女福音聖堂』に祝いをなす。我ら自らの体すなわち讃美たる使徒パウエルをもって言われし、爾の聖なる殿、および爾のハリストスの肢の再興を顧みて、これを世の終わりまで揺るぎなく、爾の衷に栄せらるるものとして堅めたまえ」
と祈祷がささげられた。
また、大ロウソク、大十字架、凱旋旗を掲げての「十字行」も行われ、「主や、なんじのたみをすくい なんじの業に福をくだせ 我がくにに さいわいをあたえ なんじの十字架にてなんじの住まいを守りたまえ」と聖職者、信徒が共に歌いながら聖堂の周囲を回った。
成聖式の後には祝賀会も行われ、大阪ハリストス正教会のゲオルギイ松島雄一司祭は「木の建物はだんだんと良さが出てくるものだと感じます。木は神様が作られた人間に一番ふさわしい素材なのではないでしょうか。そして、人間が手を入れて大事に守っていくことが大切です。京都には木で造られた建物がたくさんありますので、その一つとして末長く守っていきたいと思います。教会の皆様のほかにも、京都市の文化財保護課や修復に携わってくれた建築会社の方々、そして地元市民の方も協力していただいたことにとても感謝しています」と述べた。
今回の修復に当たっては、京都市と京都府による補助を受けることができたということで、祝賀会に列席した京都府文化財保護課の担当者は以下のようにあいさつした。
「皆様がとても幸せそうなお顔をされているので、とてもよかったとほっとしています。今回の修復では、信徒の皆様が幸せな感覚をお持ちになっているので、この建物を修復したいという思いを集められたのだと思います。行政としては、生活の中に多様性の中身を確保していきたいという思いがあります。京都の神社仏閣、あるいは無宗教の方、皆さんが幸せを感じながら生活を送る。その支えがあって街をつくっていくのが行政の在り方だろうと思っています。ぜひ皆様も、今後の幸せな信仰活動の中で府民、市民の1人としてこの施設を活用し、街を支えていただけたらと思います」
また同教会が所属している中京区柳馬場通二条上る六丁目の町内会長さんは「子どもの頃、教会の近くで遊ばせてもらったこともあって、とてもなじみが深い場所です。日曜日の11時になると鐘の音がなるのが心地よい思い出です。今、私の幼い息子も『音が鳴ってるで』と言っています。こういう風景が未来永劫続いていくといいなと思います。私は宗教が違いますが、いろんな国籍の方が集まって、宗教が違っても平和に幸せに生きていければいいなと願っております。今日はありがとうございました」とあいさつした。