市内に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成遺産として田平天主堂、宝亀教会を持つ長崎県平戸市は2月27日、「平戸の良好な景観を維持保存し後世に伝えるため」の景観条例制定に向けて、世界遺産登録推進本部を設置した。同25日には、同県知事から条例制定に必要となる景観行政団体の同意を、県内の遺産に関連する自治体としては初めて取得し、今後、景観資源の把握、基本方針の検討、住民説明会の開催などを経て、来年4月の条例施行を目指す。
長崎新聞によると、同市の遺産は周辺に海や田畑が広がり、その景観が高い評価を受けている。しかし、世界遺産への本登録に向けて観光地としての注目度が高まることに伴い、土産品店の進出などで周辺環境が乱されないかとの懸念が出ている。そのため同市では、市全体を景観計画区域に指定し、遺産周辺は重点地域に指定する方針。
ながさき地域政策研究所(通称・シンクながさき、同県長崎市)が今年1月に発表した、遺産の本登録後に見込まれる経済波及効果の試算では、平戸市は登録後5年間、観光客数の平均増加率が5.6%となると予想されている。
推進本部長を務める白浜市長は、ザビエルによる布教以来、日本のキリスト教の歩みにとって同市が欠かすことのできない多くの資産を有しているとし、「潜伏キリスト教や隠れキリシタンの歴史は日本独自のもので貴重。その暮らしの舞台となった地域を美しい景観とともに世界遺産に登録したい」(同紙)と意気込みを語った。
昨年10月に長崎市内で行われた遺産のある同県5市2町の関係者ら約20人による会議では、遺産の本登録に向けて、各市町で景観条例制定に向けて取り組むことで一致しており、今後平戸市以外の市町でも条例制定に向けた動きが出てきそうだ。