恵泉女学園大学(東京都多摩市)で1日、同大学長の大日向雅美氏が、就任後初めてとなる入学式に臨み式辞を述べた。その中で大日向氏は、同大の創設者である河井道(みち)氏(1877~1953年)の言葉を通して同大における女子教育について語り、同大での学びがこの先の人生を切り開く力となってほしいとの思いを込めた。
大日向氏は、まず同大の創設者、河井道氏の言葉、「自分自身開拓者となって道を明るく照らしていく者におなりなさい。マイランターン(わたしの学燈)で」を贈った。同大が真の平和を願い、世界に向かって開かれた心を持ちながら、地域で地道に暮らしを紡ぎ、社会のため、人のために役立つことを喜びとする女性の育成を目指した河井氏の教育理念の下、女子教育を行ってきたことを語った。
また、同大の教育が、社会に真の平和を実現することに貢献できる、「自立した女性」の育成であることを伝えた。真の平和について、単に戦争がないというだけでなく、民族や人種、思想信条、貧富の差や性の違いによって差別されることなく、その人らしく生きられること、自分を大切にするのと同じように他の人を思いやることができることなどを挙げ、「ここにこそ、女性の活躍が求められなくてはならないのではないか」と述べた。
さらに、女性の人生が、「女性とは」「妻とは」「母とは」とひとくくりで表現されがちであることを指摘し、「現実はひとくくりで表現されるほどに女性の人生は単純なものでも、たった一つの狭い道をたどって済むような単線でもありません」と語った。これから行く手にはさまざな壁が立ちはだかることを告げた上で、「だからこそ、『開拓者』にならなければならない」と話した。
続けて、「人は不完全であるから成長し、進歩し、進化する期待が持てる」という河井氏のもう一つの言葉を伝えた。「自分の人生を切り開いていくような力が今はないと思っていても、その不完全さや無力さを知ることで、懸命に学ぶことや、周囲の人々から素直に教えを乞うことができる」と、自身の体験を通して語った。
大日向氏は、同大での学生生活が、この先の長い人生を生きる力となることを願っているとした上で、自分の不完全さを謙虚に思う心を大切にして貪欲に学んでほしいと力を込めた。そのことが新たな世界の扉を開き、知識が持つ力の素晴らしさを知り、新たな自分と出会う喜びを知ることになると励ました。
最後に、自身の未熟さや不完全さをつらく思ったときの支えとなった言葉、「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」を贈った。そして、大きな花を咲かせるために、同大が一人一人の個性を大切に思い、「良い土壌」となることを心から望んでいると伝えた。