「聖書 新共同訳」内の訳語「重い皮膚病」について、その原語となる「ツァラアト」「レプラ」をすべて「ツァラアト」に翻訳訂正して欲しいという要望が出されていた財団法人日本聖書協会(大宮溥理事長、渡部信総主事)は1月末、同聖書の著作者人格権を継承する「共同訳聖書委員会」(木田献一委員長)による2年間の協議の結果、これまで通り訳語として「重い皮膚病」を用いることを発表した。
同協会の発表によれば、同委はこれまでの協議によって、(1)ハンセン病が特定されたのが近代であり、それを特定した翻訳は不適当であったため過去に訳語「らい病」を用いたこと、(2)原語「ツァラアト」「レプラ」をカタカナ表記で用いた場合一般名詞として説明がつかない場合があるため、文脈に沿って「重い皮膚病」「かび」(旧約の一部で「ツァラアト」が「かび」と訳されている箇所がある)と訳することが現在考えられる最適な訳であること――を確認した。
一方で、「重い皮膚病」という表現がハンセン病やその他の病気を連想させるという批判に対しては、巻末に用語解説の付記で対応するとした。
同聖書では、旧約におけるヘブライ語「ツァラアト」は「重い皮膚病」と「かび」に、新約におけるギリシア語「レプタ」は「重い皮膚病」と訳されている。「ツァラアト」に関しては、祭儀的な汚れの観点から書かれており、病名を明瞭に判断することは出来ないが人体について用いられる場合、一般的に皮膚の疾患であると認識されていることから「重い皮膚病」と訳され、一方で衣服や革製品、家屋の壁などに対して用いられる場合は「かび」と訳されている。「レプタ」は七十七人訳によってヘブライ語原典がギリシア語に訳された際に「ツァラアト」の訳語として用いられたもので、97年以前は「らい病」と訳されてきたがそれ以降は「重い皮膚病」と訳されている。
同協会は今回の発表で、「ツァラアト」というカタカナ表記について、同委が確認した(2)「一般名詞として説明がつかない」だけではなく、列王記第一11章26節節に登場する北イスラエルの初代国王ヤロブアム1世の母ツェルアが「ツァラアトにとりつかれた者」という意味であることなど、「ツァラアト」という単語自体が旧約時代にすでに差別語として用いられていた可能性を示す例を挙げた。
同聖書の訳文の訂正は、年に2回開催される同委において協議、決定されており、決定された訂正は順次新たな印刷に反映される。