【CJC=東京】次期米大統領選で、民主党の候補指名を争うヒラリー・ロダム・クリントン、バラック・フセイン・オバマ両上院議員の陣営が、黒人公民権運動指導者の故マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師をめぐり新年に入って激しい舌戦を展開したが、15日に両議員が「停戦」を宣言した。対立がこれ以上激化すると、双方ともにイメージが損なわれるだけでなく、共和党を利するだけと判断したようだ。ただ黒人人口が優勢な南部諸州での選挙の結果次第で再燃する可能性もある。
クリントン氏はニューハンプシャー州を遊説中に、キング牧師を引き合いに出し、「キング牧師の夢が実現したのは、リンドン・ベインズ・ジョンソン大統領が1964年7月に(公民権運動の指導者らと協議を重ね、人種差別撤廃を掲げた)公民権法を制定したから」と語った。
キング牧師の「理念」よりも大統領の「実行力」を重要視し、「キング牧師の運動を傷つけるもの」と見たオバマ氏がすぐに「不適切な発言だ」と非難した。「黒人への差別撤廃を叫んだキング牧師の理念は、白人大統領の承諾なしには実現しなかった、との趣旨ではないか」という声も上がった。クリントン氏は13日、「オバマ氏が私の発言をゆがめている」と反論した。
クリントン氏は14日には、ニューヨークで開かれた民間警備会社の労働条件改善を求める労働団体の会合に出席、キング牧師の偉業をたたえた。キング牧師の誕生日(15日)のお祝いも兼ねたものとあってか、聴衆のほとんどは黒人。クリントン氏が演台に上がると、歓声とともにブーイングが起き、退席者も出た。同氏は「未完の夢を実現し、受け継いだものを実行しなければならない。誰もがキング牧師の恩恵を受けている」と同牧師に敬意を表した。
さらに、クリントン氏が「女性やアフリカ系米国人(黒人)が米大統領選に出馬する日が来る時を、どれだけ大勢の人々が夢に描いたことか。オバマ上院議員も私も、キング牧師のおかげでここまで来られた」と強調すると、拍手が沸いた。
オバマ氏に対しては、クリントン前大統領が、オバマ氏のイラク戦争をめぐる態度の揺れを取り上げ、反対で一貫していたとするオバマ氏の主張を、「私がみたなかで最高のおとぎ話だ」と非難したが、これには「度を超した軽侮」との批判が広がり、15日夜、ネバダ州での演説ではそうした発言は一切しなかった。
同日夜のテレビ討論会で、両候補は「支持者たちは時に熱狂し、制御がきかなくなる」(クリントン氏)、「支持者たちは過度に熱心になることがある」(オバマ氏)などと述べ、非難合戦が度を超していたことを認めた。