今年夏の世界文化遺産登録を目指している「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」について、日本政府と地元が、推薦取り下げを検討していることが分かった。複数の国内紙が伝えた。
読売新聞などの報道によると、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関で、事前審査を行う国際記念物遺跡会議(イコモス)が、推薦書の改定を勧める報告を1月中旬に日本政府に提出したためだという。
同紙によると、イコモスは、キリスト教禁教に関する部分をクローズアップすることなどを求めたという。また、西日本新聞によると、各構成資産が果たす役割の説明が不十分だという指摘もあったという。
日本政府は、イコモスが指摘した課題を解消するには時間が要するとして、今年夏に行われる世界文化遺産の登録審査に間に合わない可能性があり、現状のままでは登録は難しいと判断。西日本新聞によると、来週にも閣議で推薦取り下げを了解するという。
イコモスは昨年9月下旬から10月上旬の約1週間にわたって、長崎、熊本両県の8市町に点在する14の構成資産を現地調査。フィリピンの建築家ルネ・ルイス・S・マタ氏が調査員として訪れていた。
イコモスが今回、日本政府に報告を提出したのは、審査過程における意見を推薦国に伝えるよう、審査制度の一部が今年の審査から変わったことによる。イコモスは、今年4~5月に「登録」や「不登録」など、4段階評価でユネスコに勧告し、6月に開かれるユネスコの第40回世界遺産委員会で登録の可否が審議される予定だった。
世界文化遺産の推薦は、各国年1件のみ可能で、長崎の教会群は2016年の枠で推薦されていた。17年推薦枠には、福岡県の「『神宿る島』宗像むなかた・沖ノ島と関連遺産群」が既に決まっており、長崎の教会群の推薦が取り下げられた場合、再推薦が可能となるのは18年以降となる。
「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」は、現存する最古の教会として国宝に指定されている大浦天主堂(長崎市)など、14資産で構成されている。