長崎県新上五島町出身で、日本美術家連盟会員の洋画家、谷川康夫さん(77)が4月28日、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界遺産登録を願い、フランスの世界遺産を描いた「モン・サン・ミッシェル」を同町に寄贈した。同町の有川港ターミナルで行われた贈呈式には、江上悦生(えつお)町長も出席した。長崎新聞が伝えた。
谷川さんが寄贈した「モン・サン・ミッシェル」は縦約110センチ、横約150センチの大作で、2007年に4カ月かけて完成させた。贈呈式後は、有川港ターミナルに展示されている。
フランス西海岸のサンマロ湾上に浮かぶ小島モン・サン・ミッシェルは、1979年に「モン・サン・ミッシェルとその湾」としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録された。94年10月にはラムサール条約登録地ともなった。モン・サン・ミッシェルとは、旧約聖書に出てくる大天使ミカエルのフランス語読みに由来し、同じ名前の修道院も島内に建っている。
同紙によると、谷川さんは贈呈式で、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を構成する教会の一つで、同町の頭ケ島(かしらがしま)にある頭ケ島天主堂について触れ、「住民や訪れた人々が世界遺産の意義を感じてくれればうれしい」と話した。また、江上町長は「丹精込めて書き上げた作品を贈る愛郷心に感謝するとともに、登録の心強い後押しになると信じる」と感謝の意をあらわした。
埼玉県に住む谷川さんは、同県所沢市の職員を退職した2000年にフランスに渡り、現地の美術学校「アカデミー・グラン・シュミエール」で約10年間学んだ。現在はフランスを中心に創作活動を行っている。出身地である同町においても、04年に完成した上五島の捕鯨の歴史を伝える鯨賓館ミュージアムで個展を開いている。